能見、喜べぬセ界新…4番・中村に痛打
「交流戦、西武3-2阪神」(14日、西武ド)
勝利で飾りたかった。阪神・能見篤史投手(35)が西武戦で10奪三振を記録し、5試合連続2桁奪三振のセ・リーグ新記録を樹立した。だが2‐2の六回に中村に勝ち越し打を許し、6回3失点で自身5敗目。チームを交流戦初の連勝に導けず、これで交流戦勝ち越しも消滅した。
エースが4番中村に屈した。糸を引くようなライナーが中前へ抜けていく。中堅・大和のバックホームは本塁手前で高く弾み、決勝点を奪われた。力投を続けた能見だが、要所で粘りきれなかった。
マートンの本塁打で同点に追いつき、六回が勝負どころだった。だが、先頭・渡辺の3本目の安打と自らの暴投で、無死二塁のピンチを背負う。進塁打も許したくない場面で栗山をこの日最速144キロ直球で空振り三振に斬り、1死。そして、続く中村を迎えたところで内野陣がマウンドに集まり「中村勝負」を確認した。
「迷わず勝負にいった。嫌なイメージもなかったのでね」
その言葉通り、1打席目は左飛、2打席目は三ゴロに抑えていた。だが2ボールとカウントを悪くし、スライダーをはじき返された。「点を取ってもらった後なんで」。西武ドームの長い階段を上りながら淡々と話す口調に悔しさをにじませた。
勝利はつかめなかったが、球史に名を刻んだ。中村に続くメヒア、木村を連続三振に斬り、セ・リーグ初の5試合連続2桁奪三振を達成した。パ・リーグの達成者も野茂(元近鉄)、杉内(当時ソフトバンク)、ダルビッシュ(当時日本ハム)の3人だけ。「負けてるので。記録のためにやっているわけじゃない。何とも思わない」。試合に敗れ、個人記録の感慨に浸れるはずがなかった。記録より、チームの勝利。それがエースの流儀だ。
「バッターによってはスイングを見れば狙ってるものが分かる」と話すように、マウンドから18・44メートル離れた打者の狙い球を瞬時に感じ取る。さらに、投げる直前に球種を変えることもあるという。登板に向けて予習も欠かさない。「(テレビ中継は)次に対戦するチームがやっていたら遠征先とかでよく見ている。何か感じることがあると思ってね」。5月に35歳を迎え、その投球は年々、円熟味を増している。
6回3失点で5敗目となり3試合白星から遠ざかる。野茂が持つ6試合連続のプロ野球記録に挑む次回こそ、チームの勝利で飾る。