緒方V弾4打点!23歳新星やりました
「交流戦、西武1-8阪神」(15日、西武ド)
勇気百倍の一撃だ。阪神の緒方凌介外野手(23)が1‐1で同点の五回、決勝の2号3ランを中堅右へ突き刺した。この日は六回にも適時打を放ち、プロ初の計4打点。若虎の活躍でチームは貯金消滅の危機を脱した。次は5週間ぶりとなる連勝を狙う。
黄色く染まったスタンドが、スタンディングオベーションでヒーローを迎えた。五回の守備前。緒方がやまない大歓声に対して深々と2度頭を下げると、黄色い波はさらに大きく揺れた。新星が胸をすく決勝弾。ファンに歓喜をもたらした。
同点の五回1死一、二塁。変化球が2球続いた後、カウント1‐1からの3球目。野上の真ん中の直球を無駄のないスイングで打ち返した。
「前の打席も、その前の球も、チェンジアップを空振りしたので、チェンジアップは頭にあったけど…。どうやって振ったか覚えていない。必死だった」
緩やかな放物線が中堅右へ伸びる。「本塁打より抜けたという感覚だった」。打球がフェンスを越えると、ようやく速度を緩めた。7日・オリックス戦(甲子園)のプロ1号以来となる15打席ぶりの安打が、決勝2号3ランとなった。
六回1死一、二塁は中郷から左前適時打。プロ1打点だった男が、この日だけで4打点の大暴れとなった。
プロ入りから一貫しているスタイルがある。2ストライクまでは、目いっぱいバットを長く持ってフルスイング。有利なカウントでは、決して当てにいく打撃はしない。東洋大では4番も務めた強打者。追い込まれた後は「工夫がないのは嫌なので」とバットを短く持つが、相手が隙を見せれば一発を放つ可能性を秘めている。
この日は父の日。当初プレゼントする予定だった、プロ初本塁打のボールは甲子園歴史館に展示されている。そのため父・裕士さんにはプロ初本塁打のバットか、この日のバットを贈るつもりだ。
「緒方コール」に迎えられた初のヒーローインタビューでは初々しさを見せた。自己紹介はしどろもどろで、本塁打の質問には六回の適時打の感想を返してしまった。「あんなに緊張するとは思わなかった。声が震えていた」と苦笑いを見せた。それも全てがいい経験だ。まだ2年目の23歳は着実に主力への階段を上っている。