西岡悔し…1番サードで復帰もドロー
「阪神2‐2中日」(27日、甲子園)
プロ野球は27日、リーグ戦が再開された。阪神は西岡剛内野手(29)が「1番・三塁」で先発出場。巨人戦(東京ドーム)で肋骨骨折などの重傷を負った3月30日から89日ぶりの出場で5打数無安打、チームも延長12回を2‐2で引き分けた。それでも、帰ってきた男が反攻のキーマンになると信じたい。
野球の神様は再び西岡に試練を与えた。懸命のリハビリを経ての復帰戦。ファンが大歓声で迎えてくれた。温かい拍手も送られた。だが待っていた結果は5打数無安打、1失策での途中交代。「自分にいい声援が送られたのは分かった。結果で応えたかった」と悔しさをにじませる。
何度も捉えたと思った。しかし、スイングにはわずか数ミリのズレが生じていた。打席内でのボールの待ち方、追い込まれての強さは何ら故障前と変わらない。だが一回の第1打席、痛烈に捉えたかと思われた右翼への打球は伸びなかった。
第2、第3打席も絶好球を捉えたように見えたが…。平凡な左飛に倒れると、思わずバットをたたきつけた。修正した八回の第4打席は左中間へ痛烈な打球を放つも、大島に阻まれ「紙一重の差。4打席目は修正できたけど、ここは修正する場じゃないんで」と厳しい表情を崩さない。
慣れない三塁の守備では安定した動きを見せていたが、九回に谷の正面の打球をファンブルし、初失策も記録。「結果が出なかったのは悔しい」。その一言に復帰戦のすべてが集約されていたが、この時期にグラウンドへ立てたことが奇跡だ。
選手生命すら危ぶまれる大ケガを負った3月30日の巨人戦。あの衝突劇が起こった翌31日、左肩はまったく動かなかった。歩くことすらままならなかった。野球選手として前例のない故障。再びボールを投げられるか、バットを振れるか、すべてが未知数だった。
復帰は早くても8月、ずれ込めば9月か…。そんな悲観的な見通しが支配する中、本人だけは早期復帰を諦めなかった。4月、チームが快進撃を続ける中で1人、登山者が上るような坂道を駆け上がっていた。たとえ土砂降りの中でも、西岡は黙々と走っていた。
鳴尾浜でリハビリを再開した際、下半身の筋力値は故障前とほぼ変わらなかった。それが交流戦明けの復帰を可能にした要因だ。「今季も着実に1歩、1歩、成長していける」と前を向く西岡。和田監督が「倍にも3倍にもして返してくれる選手」と評したように、背番号7の復活劇はまだ幕を開けたばかりだ。