西岡、復帰後初安打「ベスト尽くす」
「阪神2‐10中日」(29日、甲子園)
敗戦の悔しさが全身を伝う。苦しみ抜いた中日との3連戦。聖地を包む虎党のため息。唇をかむ仲間。そのど真ん中にいることを、阪神・西岡は実感していた。
まずは待望の瞬間が初回の第1打席に訪れた。いきなり8点のビハインドを背負うスタート。だが、その難しい状況での勝負強さこそ、西岡剛の真骨頂だ。浜田の外角フォークを右前へと運ぶ復帰後初安打を記録し、静まりかえっていた場内を沸き返らせた。
「人生初のヒットというわけじゃないので。気持ち的に楽にはなったけど、勝ちたい気持ちしかない」。そう話した後、ある思いが脳裏を巡る。試合は大差の惨敗。だが、湧き上がる感情があった。
「一つ言えるのは、僕は野球をできない期間があって、今野球のことで悩めるのは幸せだと思いますね」。野球へ戻ってきた。その思いを言葉に乗せた。
3月30日の巨人戦(東京ドーム)、試合中の守備で福留と激突し、左右の肋骨(ろっこつ)骨折などの重傷を負って長期離脱。この3連戦初戦が、自身の復帰の舞台だった。
3戦合計11打数1安打と、完全復調にはほど遠い。チームも決していい状態ではない。それでも苦しみを皆と共有できる幸福感を、敗戦の悔しさの中から探し出した。だからこそ、また前を向ける。
「まだ試合は半分以上残っている。落ち込んでいてもチームは上がってこない。僕も1番で起用されている以上、もっとヒットを打たないといけない」
西岡は自身を、そしてチームを奮い立たせるように言葉を発し続ける。チームの4位転落にも「順位はシーズンが終わったときに決まる。それが分からない間はベストを尽くす」。不死鳥のごとき活躍は、まだこれから。それが猛虎の反攻を告げる号令となる。