まるで江夏氏!岩田8回0封で連続G倒
「阪神3‐0巨人」(21日、甲子園)
浜風と自分のボールを信じた。2点リードの四回。2死から安打と四球で初めて得点圏に走者を背負ったが、阪神・岩田は臆することなく内角を攻めた。風は右から左へ強く吹いていた。初球、138キロのツーシームで阿部を一ゴロ。聖地の風を熟知した頭脳的な投球で、ピンチを切り抜けた。
「風の強い球場なので左打者は内を攻めないと打たれる。いくときはいかないと。球場の特性を生かすことができました」
六回も地の利を最大限に生かした。無死から亀井に安打されたが攻める気持ちは忘れない。長野が放った打球は東京ドームなら本塁打という大飛球。だがここは広い甲子園だ。長い滞空時間に耐えた白球は中堅右フェンス際で、大和のグラブに収まった。
異様な雰囲気の中で試合は始まった。試合前に行われた江夏‐田淵の黄金バッテリーによる始球式。2人のレジェンドの登場に今季最多4万6803人は大歓声。その余韻が残る中でも、左腕は落ち着いていた。登板前、江夏氏からかけられた言葉を信じた。
「今のスタイルを変えるなと言っていただいた。しっかり自分のピッチングができたと思います」
直球、ツーシーム、カットボールの制球が優れ、フォークも低めに決まった。8回5安打無失点でチームトップタイの8勝。防御率は規定回数に1回2/3足りないが再び1点台になった。「岩田に尽きるゲームだね」。和田監督はこう続けた。「まるで岩田が江夏さんが投げているようなね」。通算206勝。背番号21の背中に、伝説の左腕の姿を重ね合わせた。
前回は今季初の中4日で2年ぶりの巨人戦勝利。そして後半戦の開幕投手に指名されたこの夜も首脳陣の期待に応えてみせた。復活のシーズンを送る岩田が、14年のGキラーを襲名する。