代打良太が逆転2点打!気迫の右打ち
「阪神3‐2巨人」(22日、甲子園)
阪神・新井良はにこりともしなかった。二塁ベース上、大歓声が背中を揺らしていた。代走を送られベンチに戻ると、チームメートと拳を重ねた。それでも、ムードメーカーは白い歯をこぼさなかった。
1点を追う六回。和田監督が動いた。2死からメッセンジャー、上本で築いた二、三塁の好機。大和の代打で指名された新井良は外角のスライダーを捉え、低空のライナーで右前へ。杉内から起死回生の逆転打を放った。「大和の代打だったので、大和の気持ちも込めて…。皆のつながりの中で打たせてもらった1本だと思う」
五回までノーヒットに抑えられていた左腕を六回2死から攻略した。ベンチから変化球の軌道を見極め、早いカウントで勝負をつけた。昨季、杉内との対戦打率は・400。「いいイメージというか…。いい場面だったので、積極的にいこうと思っていた」。冷静な状況判断が功を奏した。和田監督は「あの球を狙ってたんじゃないかな。的を絞った良太らしいヒットだった」とたたえた。
6月25日に出場選手登録を抹消された。それまで52試合の出場で打率・292、6本塁打。好成績を残しながら、チーム構成上の都合で1軍枠を外れた。チーム関係者からは驚きの声も上がったが、新井良は黙ってロッカールームの荷物をまとめた。
「こういう時にこそ、みんな、お前を見とるけぇ。恥ずかしくない態度で、しっかりやってこい」。激励の主は兄貴浩だった。14日に再登録されるまで兄の言葉通り、真摯(しんし)な姿勢で練習に励んだ。
ガッツマンはガッツポーズを胸の内にしまいこんだ。「それについてはまあ…。それよりも、きょうは孝介さんでしょ」。サヨナラの瞬間、真っ先に拳を突き上げていたのは、新井良だった。