今成、V二塁打!激アツ逆転ショー
「広島3‐4阪神」(25日、マツダ)
打席から確かな雰囲気が漂っていた。ここで決めるという意志を感じさせるボールの見極め方‐。厳しいボールには見向きすらしなかった。重圧をかける阪神・今成の目に飛び込んできた4球目、高めに浮いたチェンジアップ。体が瞬時に反応し、鮮やかに左翼線へ打ち返した白球は、ラインの内側に弾んだ。
決勝の左翼線適時二塁打。二塁に到達すると、何度も手をたたいて感情をあらわにした。3‐3で迎えた八回1死一、二塁の場面。一打勝ち越しの状況で「とにかく甘い球を積極的に行こうと思っていた」と、2度は来ないような甘いボールを一振りで仕留めた。
和田監督は「打って当然というか、あそこで打ってこそバッティングのレベルが上がる」と目を細める。前田との相性を買われ、普段より打順を一つ繰り上げての起用。広島のエースから結果は出せなかったが、勝負を決める価値ある一打で敵地に歓喜の六甲おろしを響かせた。
今季2度目のマツダスタジアム。前回、4月15日からの3連戦はどん底まで落ち込んでいた。オープン戦で結果を出しながら、開幕直後に襲った大不振。「力の抜き所が分からない」。この時、打率は今季最低の・107まで落ち込んでいた。
評論の仕事で訪れていた掛布DCには膝の使い方をアドバイスされた。ただそれ以上に「感覚的にはもうちょっとなんです」と、鬼気迫る表情でバットを振りながら、打開策のポイントを探っていた。
あの3連戦後、打率は上昇の一途をたどった。並の選手であれば、結果を残せず4月下旬に消えていてもおかしくはなかった。苦しみを乗り越えたからこその現状。「シーズンが終わらないと分からないけど、1日、1日を大事に」と前を向く今成の成長は、まだまだ止まらない。