上本2戦連発!連夜の同点弾も空砲に
「広島7‐5阪神」(26日、マツダ)
この小さな体のどこにそんなパワーが秘められているのか。マツダスタジアムを歓喜と興奮のるつぼと変え、一度は試合を振り出しに戻した起死回生の同点アーチ。大歓声を背にダイヤモンドを一周した阪神・上本の姿が、誰よりも大きく映えた。
場面は2点を追う八回だった。榎田がエルドレッドに一発を浴び、敗色濃厚となった終盤。中田に簡単に2死を奪われたものの、2死から代打・新井が左前打で出塁した。
2死一塁で迎えた第5打席。その初球だった。ど真ん中に来た142キロの直球を完璧に振り抜くと、打球は左翼席へ向かって勢いよく伸びていった。懸命に中東が白球を追い、最後はフェンス際でジャンプしたが、そのままスタンドイン。自身初の2試合連続アーチは、前日25日に続いて試合を振り出しに戻す6号2ランだ。
再び打率も3割に乗せ、開幕当初の巧打者スタイルに、本来のパンチ力が兼ね備わってきた上本。決して大きいとは言えない体のどこに、これだけの長打力が秘められているのか。関川打撃コーチは「確かにリストは他の選手と比べても強いけど、筋力的にはそんなに突出した数値はない」と明かす。
その中で長打力に起因するとみられるのが瞬発力。「走力もだけど、一瞬で力を込められる瞬発力がある。筋肉の質が持久系よりも瞬発系の方が強い」と語る同コーチ。バットを振り出してからインパクトの瞬間までのスピードは群を抜く。ボールが当たる一瞬にすべての力を込められる能力は、他の長距離砲にはない才能だ。
「負けたんで特にないです」。試合後、上本は厳しい表情を貫いたままバスへ乗り込んだ。ただ長打力も備わってきた今、1番打者としての存在感に、もはや疑う余地はない。