鳥谷決めた!歳内好投に応える2点打
「阪神5‐4ヤクルト」(30日、甲子園)
阪神・鳥谷が培ってきた経験が、あの一打に集約されていた。1球、1球、状況が変わっていく中で最後は追い込まれてからのフォークに対応してみせた。中前に弾んだ決勝の2点タイムリー。主将の一振りで虎が連敗を止め、若き右腕をお立ち台で輝かせた。
場面は四回。相手の失策、今成の適時二塁打で追いつき、なおも2死二、三塁。カウント2‐1からの4球目、石山が投じたフォークに腰砕けのような形で空振りを喫した。「直球待ちで甘い球が来たら行こうと思っていた」。完全にタイミングを外された上に、狙いとは違う形で追い込まれた。
1球でバッテリーが圧倒的優位に立った状況。本来なら打者は苦しくなるが、打席の鳥谷は違った。「球種よりストライクゾーンに意識を置いて」。状況を客観視し、わずかな時間で頭と体を切り替えた。続く5球目、同じフォークをきれいにミートし、中前へはじき返した。
チームの連敗を止め、好投した歳内に報いる白星をつけた決勝打。「あの投球で流れが来たんで」と主将は若虎をたたえた。状況を読み、ワンチャンスを仕留められる技術。関川打撃コーチは「配球だったり、状況の読み方というのは、トリがチームの中でも一番うまい」と言う。
並の打者なら崩されての空振りから、頭と体を切り替えるのは容易ではない。チャンスの場面で、追い込まれた状況ならなおさらだ。それを鳥谷は1球の間に平然とやってのけた。考えながら打席を積み重ねてきた経験と技術。それは1551安打という数字にも証明されている。
初回の中前打にも「まだまだ行けるという雰囲気を初回の攻撃でつくれた」と納得の表情を浮かべた主将。連敗ストップへ流れをつくった男は、どんな状況でも頼りになる。