歳内プロ初星無死満塁3人斬り虎救った
「阪神5‐4ヤクルト」(30日、甲子園)
若虎が輝いた。プロ3年目の歳内宏明投手(21)が四回、無死満塁のピンチに2番手で登板。無失点で切り抜け、プロ10試合目の登板で初勝利を挙げた。聖光学院で甲子園を沸かせた右腕が、今後の飛躍を予感させる快投。猛虎はリリーフが踏ん張り、打線が奮起して、逆転勝ち。連敗を3で止めた。
やっぱりこの男は、甲子園がよく似合う。大歓声の中、上がったお立ち台。ウル虎グリーンのユニホームに身を包んだ歳内は、少し照れくさそうにプロ初勝利のウイニングボールを掲げた。
「試合が終わって言われてびっくりしました。うれしかったですけど、1イニングしか投げていないので実感がなかったです」
度胸満点の投球で、逆転劇を呼び込んだ。四回、無死満塁の場面でマウンドへ。点差は2点。これ以上、追加点を奪われると試合が決まってしまう。「ランナーのことは気にせず思い切って無我夢中で投げました」。まず石山を直球で見逃し三振。次の山田を迎えると、鼓動はさらに高鳴った。
2010年8月16日。夏の甲子園3回戦。聖光学院のエース歳内は履正社・山田に2ランを浴びた。試合には勝ったが、打たれたことは脳裏にこびりついていた。「甲子園で打たれていたのでその気持ちを持って投げました」と魂を込めた。決め球フォークに山田のバットは空を斬る。4年後のリベンジだ。
最後は森岡を二ゴロに打ち取り火消し成功。11球の熱投に和田監督も「今日は歳内に尽きる」と絶賛した。
入団当初は甲子園で三振の山を築いたフォークに注目が集まったが、直球に強いこだわりを持つ。プロ1年目の9月にプロ初先発。だがそこから伸び悩んだ。3年目の今季も先発で結果を残せず、鳴尾浜でもう一度、原点の直球を磨いた。この夜、自己最速の147キロを計測。1年目に「目標は1軍昇格ではなく1軍で勝つこと」と言い続けた言葉は、やっと現実になった。
感謝のプロ初勝利だ。開幕前に結婚を発表し4月上旬には愛娘を授かった。クールな男も「かわいいですね」と笑みがこぼれる。母校の聖光学院もこの夏、延長十一回の激闘の末、サヨナラ勝ちで甲子園出場を決めた。
「今まで支えてくれた人はたくさんいる。高校時代は福島の方に支えてもらった。感謝したいです。これから自分の仕事をして、そういう姿を見てもらうことが恩返しになると思います」
優勝争いが激しさを増す夏。頼もしい救世主が誕生した。