俊介びっくり杉撃ち弾!首位攻防戦先勝

 「巨人3-4阪神」(12日、東京ド)

 気合と集中力で首位攻防第1ラウンドを制した。そして再び、首位巨人に0・5ゲーム差だ。阪神は0‐1の三回2死から俊介外野手(26)が自身3年ぶりとなる今季1号ソロを左翼席へ運んだ。この値千金の同点ソロで流れをつくり、最後は1点差で逃げ切り勝ちを収めた。

 ざわめきはイニングの攻撃が終わっても収まらなかった。ファンも目を疑う一撃が、伏兵のバットから飛び出した。何よりも自らが驚きの表情を浮かべてダイヤモンドを一周した俊介。「まさか入るとは思わなかった」。3年ぶりのアーチが、首位攻防戦で価値ある先勝を呼び込んだ。

 試合前、和田監督からこう告げられた。「ラストチャンスやぞ!!」。大和の離脱後、代役を期待されながらも打撃面で精彩を欠いた。6試合ぶりのスタメンとなった伝統の一戦は、自らの存在意義を問われるゲーム。その真価を発揮したのは1点を追う三回だ。

 2死走者なし。「最近、真っすぐで攻められることが多かった。だから真っすぐを狙って」とカウント1‐1からの3球目、3つ続いた内角直球を狙い打った。きれいに体が回転し、快音を残した白球は失速することなく左翼席へ飛び込んだ。

 2011年4月の中日戦以来、プロ通算3本目のアーチは負けられない首位攻防戦で、試合を振り出しに戻す一発。「打った感じは良かったですけど、自分がビックリです」と俊介は笑った。試合前にゲキを飛ばしていた指揮官は「ケツを叩かんとやらんやつやから。ケツを蹴っ飛ばす一言や。早い回に出て再スタートを切れた」と最大限の賛辞を贈る。

 勝負どころで幾度も意外性のある働きを見せてきた男。決して大きいとは言えない体で1軍の舞台を戦い抜いてきた証しが、ボロボロに欠けた奥歯にある。耐えきれないほどの爆発的な力を一瞬で発揮するため、何カ所も奥歯が欠けてしまった。

 「これをやっとかないと歯がなくなる」と昨オフには特注のマウスピースを購入したほど。何を“しでかす”か分からない俊介の意外性‐。線の細い体からは想像できない一瞬のパワーが、その原動力になっている。

 「こういうチャンスをもらったんでしっかり役割を果たさないと」と一回と五回の2度の送りバントも一発で決めた。攻撃の流れを生み出し、巨人に0・5差へ迫った和田阪神。こんな働きができる“伏兵”がいるチームは、強い。

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