上本、満塁一掃V打!連敗止めて再進撃
「DeNA4‐7阪神」(15日、横浜)
選手会長が決めた。阪神・上本博紀内野手(28)が同点の八回2死満塁で、走者一掃の勝ち越し3点適時二塁打を放った。中盤までの4点リードを追い付かれたが、1番打者が重たい空気を振り払った。これでDeNA戦は2010年以来、4年ぶりの7連勝。巨人との首位攻防戦は負け越したが、ここから再進撃といきたい。
すべての力を込めてバットを振った。ありったけの力でボールを引っぱたいた。逆風にも負けず伸びていった白球はそのまま中堅フェンスを直撃。結果に悩み、苦しんだ上本が放った起死回生の一撃が、追い詰められた虎を救った。
場面は同点に追いつかれた直後の八回だった。序盤の4点リードを守れず、相手に流れが向く中で2死無走者から打線がつくった満塁の好機。ここを逃せば、敗色が濃くなる中で迎えた打席に立った上本。「1球に食らいついていこうと思って」とカウント1ボールからの2球目、高めに浮いた142キロのストレートを体に残るありったけの力を使ってたたき上げた。
中堅フェンスを直撃する走者一掃の3点適時二塁打。後半戦初のタイムリーが、再び和田阪神へ勝利の女神を引き寄せた。巨人との首位攻防戦で11打数1安打と精彩を欠き、打率は・278まで落ち込んだ。開幕時より頬はこけ、レギュラーを奪うために大きな関門となる蓄積疲労との戦い。それでも「疲労がない人はいない」と、き然と言いきる。
ここまで上本を強くしたのは何か‐。2軍監督時代から背番号4を見てきた吉竹野手チーフコーチは「ケガをするたびに、それを乗り越えるたびに肉体的、精神的に強くなっていった」と言う。並の選手なら故障が重なるたびに、技術、体力は衰える。そしてプロ野球界から消えていく。だが上本は違った。
故障が強じんな心と体を作り上げた。前カードの巨人3連戦中、試合前のフリー打撃で試行錯誤する背番号4の姿があった。不振の原因は右手の押し込みなのか、スイングの軌道なのか‐。自分で考え、苦しみ、導き出した結果が走者一掃の決勝タイムリーを含む2安打。それでも本人は「まだ完全に戻ったわけじゃない。そんな簡単なもんじゃないので、気を引き締めて」と前を向く。
結果にあらがう。不振を脱却するため、必死に答えを求める。そこで初めてレギュラーの条件と言える“修正力”が身につく。上本が乗り越えた壁が本物ならば‐。王者の背中を捉える大きな原動力になる。