鳥谷、球団5位タイの111度目猛打賞
「阪神3‐1中日」(20日、京セラ)
ムダな力は一切、感じなかった。どんなコースでも、どんな球種でも対応して見せた。バットを振れば、ヒットゾーンへ飛ばす阪神・鳥谷のスイング。2試合連続の3安打猛打賞をマークした主将のバットが止まらない。
初回の第1打席で甘い直球を完璧に中前へクリーンヒットすると、四回先頭の第2打席では追い込まれながらも、外角低めの難しいスライダーを右手1本で左前に落とした。
六回の第3打席も、カウント1ボールからの甘い直球を流し打って今季13度目の猛打賞。これで通算111度目とし、球団歴代5位の今岡に並んだ。
「打てる打てないは別にして、しっかりボールが見えて反応できている」と確かな手応えを口にする鳥谷に、球団歴代3位に位置する和田監督は「早く俺を抜いて欲しい」とさらなる飛躍を求める。
打撃だけでなく、守りでは再三の難しいゴロを華麗にさばいた。八回1死から高橋周が放った二遊間への厳しい打球も「グラブに入ってた」と鮮やかに捕球して一塁へ送球。指揮官が「守りから流れをつくってくれた」と語るように、球団歴代の遊撃手の中でも攻守で“最高峰”の域に達しつつある。
そんな男が導き出したプレーの極意。それは力を抜くことだった。「難しいバウンドだったり、イレギュラーしそうなときはあえて力を抜く。体で止めようとするのではなく、柔らかく、どんなバウンドにも対応できるように」。アマチュアではイレギュラーは体で止めろと指導される。だが体を前に出せばおのずと力が入る。
それが一瞬の反応を遅らせる。打撃でも力が入れば厳しいボールへの対応力がなくなる。力の抜き加減を自らの経験で導き出した鳥谷‐。優勝戦線に臨む和田阪神の核として、これほど頼もしい存在はいない。