まぁトンだ退場劇…虎大拙攻で鯉に連敗

 「広島2‐1阪神」(23日、マツダ)

 かなり痛い連敗だ。阪神のマット・マートン外野手(32)が初回、見逃し三振に倒れ、球審に暴言を吐いて退場処分を受けた。打線は、毎度懲りない助っ人5番の不在も影響し、拙攻の連続で12残塁。1点を返してなお1死一、三塁の九回は4番・ゴメスが二ゴロ併殺打で万事休すとなった。

 無念の敗北。屈辱の連敗。終幕を告げたゴメスの併殺打。厳しい表情のまま、戦場に背を向けた和田監督は、視線を一切動かすことなく、会見場を通り過ぎた。胸に込み上げ、あふれ出た悔しさの渦。早い足取りの靴音に悲しさが混在した。

 監督就任3年目の夏。快勝時はもちろん、どれだけぶざまな負けを喫しても、必ず足を止め、記者団の質問に耳を傾け、偽らざる心中を唇に乗せてきた。だが、悔恨の念が限界点を超えたのだろう。監督就任後初めて、試合後の会見場を素通りした。

 口を真一文字に結び、失意の帰路を進んだ虎将。もどかしい敗戦だったのではという問いに、「うーん。明日行くわ」と申し訳なさそうに頭を下げ、力ない声を振り絞るのがやっとだった。乗り込んだバスの中でも終始、表情を動かさなかった。反省、失意、無念…。幾多の感情が脳裏を駆け巡っているように映った。

 無数の好機が存在したからこそ、指揮官の苦悩は深い。3者凡退はわずか1度だけ。得点圏に7度走者を送り込んだが、得点は九回に鳥谷が放った中前適時打による1点のみ。12残塁の拙攻。連夜の決定打不足で、必死の思いで左腕を振り続けた能見を見殺しにした。それこそがすべてだった。

 大誤算を招いたのはマートンだ。初回、2死一、二塁の先制機。2ストライクからの外角146キロ直球を見逃し三振と判定され、感情の糸が切れた。和田監督、関川打撃コーチの制止を振り切り、飯塚球審に暴言を吐き続けた。退場‐。いきなり首位打者を失った打線。リズム感も失われた。

 象徴的なシーンは七回。2死満塁で打順は5番に回ったが、代打・関本が二ゴロ。マートンが感情を制御できなかった代償が、敗北となって猛虎を襲った。自らの見極めとは違う連夜のジャッジでも、優勝を狙う打線の中軸を担う責任感を強く持たなければならない。心の波を可能な限りフラットに保てなければ、戦いを優位には持ち込めない。大いなる反省を結果に刻むことが、チームへの謝罪になる。

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