狩野弾!帰ってきた虎聖地で10点大勝

 「阪神10-5ヤクルト」(29日、甲子園)

 阪神は今月1日以来の本拠地・甲子園での試合で、打線が12安打10得点と爆発して大勝した。今季初めて1軍に昇格し、スタメン出場した狩野恵輔外野手(31)が、728日ぶりとなる今季1号2ランを含む3安打4打点と大活躍。終盤に追い上げられたが、九回表無死満塁の場面で降雨コールドゲームとなる“幸運”も。残り28試合、聖地に力を得て、再び加速する。

 これが最後のカクテル光線だと思っていた。結果を出さなければ二度と、この舞台に立てないことは分かっていた。選手生命がかかった一戦、チームにとっても優勝争いを左右する一戦‐。そこで狩野が見せた3安打4打点の働きが、野球の神様を再び虎へ振り向かせた。

 「申し分ない。きょうは狩野やな。あの本塁打で行けるとなった」と和田監督もうなった一発。場面は2点リードの三回2死二塁で迎えた第2打席。赤川が投じた初球を豪快に振り抜いた。打球は弾丸ライナーで左翼席に突き刺さる728日ぶりの1号2ラン。「打った球も分からなかった」と極限状態で放った一撃が、チームの、そして自身に絡まった重い鎖をほどいた。

 四回には3点を追加しなおも2死二、三塁の場面で、虎時代にバッテリーを組んだ阿部のシュートを左翼線へ痛烈に引っ張った。ダメ押しの2点タイムリーで09年以来、5年ぶりに1試合4打点を記録。その間、狩野を襲った度重なる腰の故障、悪夢の育成契約‐。その悔しさをすべて晴らす活躍に「いろいろあったけど、神様っているんだなと思った」と喜びをかみしめる。

 「きっとラストチャンスやから」。この日午前、荷物を運びに来た鳴尾浜で狩野はこうつぶやいた。ここで結果を出さなければ…戦力外通告という残酷な運命が待ち受けるのは分かっていた。

 ウエスタン・リーグで結果を出しても1軍に呼ばれない現状を、14年目のベテランは理解していた。生き残るために、大好きな野球を続けるために‐。春先には広島・東出に頭を下げ、打撃フォームのアドバイスをもらった。横浜などに在籍した種田をほうふつとさせる“がに股打法”は、崖っぷちに立たされた男が導いた最終形だった。

 幾多の思い、努力が凝縮した3安打。最終回に激しい降雨でコールドゲームとなったため、ファンが待つお立ち台には立てなかった。それでも「これからが大事なんで」と前を向く。たった1試合で巨人に負け越した虎の呪縛を解き放った男‐。狩野の野球人生はまだまだ、終わらない。

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