西岡52日ぶり復帰即!代打で二塁打
「阪神2‐6巨人」(11日、甲子園)
阪神は15年ぶりとなる甲子園での巨人3連戦3連敗で3年連続のカード負け越し、そしてマジック再点灯を見せつけられる屈辱を味わった。それでもかすかながら光明も見えた。52日ぶりの1軍復帰となった西岡剛内野手(30)が代打で二塁打を放ち、反撃に弾みを付けた。流れを変えられる男の復帰を再浮上のきっかけにする。
心のボルテージが一気に上がった。西岡の顔つきが明らかに変わった。代打・西岡のコールに、聖地を包んだファンの大歓声‐。「本当にうれしかった」。どん底から這(は)い上がって来た男がひん死の虎に確かな光明をもたらした。
場面は七回無死一塁。四回から何度もネクストバッターズサークルに立ち、ようやく巡ってきた出番でも「それが今の仕事だから」と集中力は切れていなかった。1ボールからの2球目、真ん中高めの直球をこん身のフルスイングではじき返した。
打球は右翼席へ向かって高々と舞い上がり、風に乗って美しい放物線を描いた。惜しくもスタンドには届かなかったが、ジャンプした橋本のグラブをはじいた。復帰初打席でいきなりの右越え二塁打。これが上本の2点適時打を誘発し、沢村に23イニングぶりの失点をつけた。
和田監督は「雰囲気が変わった。負けはしたけど息を吹き返した感じがする」と振り返った。まだ守備に就ける段階になく、出番は代打に限られるが、その存在感は鳥谷ら主力をはるかにしのぐ。
「本当はずっと1軍にいられれば良かったけど」と唇をかんだ西岡。再抹消された7月下旬、首を回すのも困難な状態に陥っていた。開幕第3戦のアクシデントで負傷した箇所に水がたまり、関節や神経を圧迫していた。
全国の病院を回り、出た診断は芳しくなかった。周囲からは今後の野球人生のため、無理しないよう諭す声もあった。それでも本人の考えは違った。
「選手は必要とされることが一番の幸せなんです」。現場の復帰要請に応えたかった。「100%じゃなくても自分ができる限りのことを」と代打限定でも構わなかった。
チームのため、そしてこんな状況でも応援してくれるファンのため。そんな“心”を持った西岡にしか、よどんだ空気が漂う虎を変えることはできない。