マートン弾!神宮で驚異の打率・611
「ヤクルト3-5阪神」(15日、神宮)
勝利への過程を彩る大きな風穴をあけた。好相性を誇る神宮の杜。阪神・マートンの黒バットが重苦しい雰囲気を打ち破った。五回、左翼席に打ち込んだ値千金の同点14号ソロ。首位打者を快走する一打が、今月初の連勝を呼び込んだ。
狙った球ではなかった。1点を追った五回、無死。3ボール1ストライクから直球を見送ったラストボール。129キロのチェンジアップ。乾いた打球音を残した低い弾道。一直線で黄色に染まった左翼席を突き刺した。
「チェンジアップを狙っていたわけじゃないんだ。ゆったりとスローダウンし構えながら、ストライクゾーンに来たボールを捉えようという意識だったんだ」。はやる気持ちを抑え、自分の間を重視して勝負球を射抜いた心の勝利だ。
頼りになる男だ。球場別最多となる5本塁打目。神宮球場の今季打率は、36打数22安打の・611。どんな苦境でもタダでは終わらない。必ず何かをやってくれる期待感が自然と球場に漂う。
来日初のリーグ優勝は絶望的な状況だが、戦いの場が残されている限り、常にベストを尽くす。1球たりとも無駄にはしない。その先に初のタイトルが待っている。