岩田奮投8回0封も…遠い10勝目
「DeNA2-1阪神」(23日、横浜)
目前で、その手からこぼれ落ちた白星。2桁勝利への5度目の挑戦も、敵の劇弾の前にかき消された。ただ、痛恨の敗戦の中で、阪神・岩田が見せた粘りは、この先の戦いへ向け、一筋の光明となった。
08年以来の大台へ。そして甲子園でのCS開催へ、左腕の気迫がみなぎる。楽な展開ではなかった。初回1死二塁の危機を皮切りに、二、三回も先頭打者の出塁を許す。三回は2四球が絡み1死満塁という局面を招いた。
「ストレートだけじゃ抑えられないんでね」とスライダー、フォーク、カットボール、シュートと、多彩な変化球を織り交ぜる。だが、ここ一番で生きたのはストレートだ。
三回の場面も、グリエルを遊飛、筒香を二ゴロに抑えたが、ともに投じた決め球は直球だ。四回以降、DeNA打線に許した安打はわずか1本。七回は先頭のブランコを内角の直球3つで見逃し三振に斬るなど、スコアボードにゼロを並べ続け、八回の鳥谷の先制打へとつなげた。
もう同じ失敗は繰り返せない。2桁勝利に王手をかけながら、4試合で足踏み。最近は勝負どころの1発に泣き、和田監督から「反省が生かせていない」と厳しい言葉を受けた。だが、この日は「今日は非常によかったんじゃないか」と絶賛だ。
九回に呉昇桓がブランコのサヨナラ2ランを浴び、またも10勝目はならなかった。それでも岩田は「僕は勝ち星は巡り合わせだと思っているので」と淡々と振り返った。
この先を見据えれば、刻まれたゼロにこそ価値はある。「任せられたところで、しっかりゼロを並べるのが仕事。そういう意味では(仕事が)できたと思う」。CSを勝ち進めば、大一番で左腕の出番を得る可能性はある。今日の投球は、虎の下克上への第1歩だ。