マートン・338初の首位打者“確定”
「広島2-4阪神」(1日、マツダ)
勝つしかない状況でも、阪神・マートンの高い打撃技術はぶれなかった。大瀬良に浴びせた先制パンチで得た主導権は、最後まで相手に渡らなかった。先制適時打を含むマルチ安打で自身初の首位打者を確実にした助っ人。ゲームセットの瞬間、すべての呪縛から解き放たれたように最高の笑みを浮かべた。
価値ある一打が飛び出したのは初回だった。「どんな場面でも自分の打撃をするだけだと思っていた」と2死一、二塁で迎えた第1打席。立て続けに変化球を空振りして追い込まれても、心は動じなかった。「力負けすることなくコンタクトできた」とカウント2‐2からの6球目、高めの直球をコンパクトに振り抜いた。
打球は痛烈に右前で弾み、大和が二塁から生還。2位・広島との最終決戦で、のどから手が出るほど欲しかった先取点をたたきだした。八回にも右前打を放ち、打率・338で首位打者に立ったまま全日程を終了。1試合を残す広島・菊池に1分5厘差をつけており、来日初の栄冠に当確ランプをともした。
これまで最多安打のタイトルを3度獲得しながら、縁がなかった勲章‐。その原因は調子の波にあった。「1年間を通してあるバイオリズム」と本人が明かしていたように、蓄積疲労が影響する夏場に必ずスランプに陥ったことで、打率を下げていた。
だが今年は7、8、9月の月間打率はいずれも3割超え。これまでの反省を生かし、キャンプから重点的にランニングメニューをこなした。シーズン序盤には、大木通訳と一緒に試合前練習で走り込みを行い“体力の貯金”をつくっていた。
打撃練習も疲労が少なく集中できる方法を模索したことが奏功。来日5年目を迎えた助っ人が、確かな進化を示してシーズンを戦い抜いた。