福留が大仕事!第1S突破へ千金王手弾

 「セCS第1S第1戦、阪神1‐0広島」(11日、甲子園)

 クライマックスシリーズ(CS)ファーストSが開幕した。過去4度、全てファーストSで敗退している阪神は、福留孝介外野手(37)がPL学園の後輩、広島・前田から六回に値千金の決勝弾を放った。前田との対戦打率・600のキラーぶりを見せつけた。12日の第2戦で阪神が勝つか引き分ければ、球団初のファイナルS進出が決まる。

 あまりにも美しい弾道がバックスクリーンへ消えていった。打席から寸分のズレも無く、一直線に伸びていった白球‐。見ている者すべてが感嘆した完璧なアーチ。聖地を支配した一瞬の静寂から沸き起こった大歓声が、ダイヤモンドを回る福留に降り注いだ。

 「思い切っていってやれと思っていた」と振り返った場面は0‐0の六回だった。1死走者なしで迎えた第3打席。カウント3ボールからでも「打てのサインだったから」とスライダーに食らいついた。結果はファウルだったが、前田の表情が少しだけ変わったように映った。

 たった一振りで相手に与えた重圧、緊張感‐。ジワリと追い込んでからの5球目、150キロの直球は甘く入ってきた。一発を狙って捉えた打球は「行ったと思った」。両手に残った心地よい感触が、弾道の終着点を示していた。

 中日時代を含め、CSでは自身初アーチ。天敵から価値ある決勝点をたたき出し、和田監督は「期待に応える素晴らしい一発。大一番で結果を出せる選手」と称賛を惜しまなかった。そして何よりも福留をたたえたのは虎党。七回表の守備に就く前、一塁側から右翼席にかけて壮観なスタンディングオベーションが起こった。

 調子が上がらなかった前半戦、そのファンから罵声やヤジが飛んだ。結果に悩み、糸口を探っても答えは見つからなかった。「バットの芯に当たらない方がヒットになるんじゃないか」とこぼしたこともあったという。

 “天才”という称号を欲しいままにした男が味わった苦悩。だが絶対に現状から逃げなかった。甲子園の室内練習場には使い古された福留のバットが何本も置かれている。数え切れないほど打ち込んで手にした最高のスイング‐。ファンを結果で振り向かせた姿こそ、正真正銘のプロと言っても過言ではない。

 今まで経験したこともない大歓声に「すごかった。ここでやってる、この声援を味方につけてやっているんだと」と喜びをかみしめた背番号8。価値ある1勝をもたらした決勝アーチ。あの美しすぎる放物線は、福留にしか放てない。

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