和田虎“衝撃終幕”まさか「守備妨害」
「日本シリーズ・第5戦、ソフトバンク1-0阪神」(30日、ヤフオク)
29年ぶり日本一の夢は、あっけない幕切れでついえた。1点を追う九回1死満塁の好機に西岡剛内野手(30)の走塁が守備妨害とされ、和田豊監督(52)の抗議も実らなかった。シーズン2位からCSを無敗で勝ち上がった阪神だが、初戦勝利後に4連敗。シリーズで敵地9連敗となった。ソフトバンクは3年ぶり6回目の日本一を果たした。
想定外の幕切れ。29年ぶりの日本一を目指した和田阪神の夢は無残にも砕け散った。シリーズ初戦を制してからの4連敗。敵軍に傾いた流れを引き戻せず、聖地に戻ることを許されなかった。猛虎の歩みは志半ばで止まった。
同点-。歓喜は一瞬にして打ち消された。1点を追った九回、1死満塁。西岡が一ゴロ。3-2-3と転送された送球が西岡の左手に当たった。白球が一塁側ファウルゾーンを転がる中、代走・田上が二塁から本塁を陥れた。起死回生の同点劇と思われた矢先、衝撃の判定が下された。
「最初から中、中と入っていた。左バッターなら中には入らないけど、明らかに妨害してやろうという意図が見えた」と白井球審。西岡が併殺を阻止するためにスリーフットラインの内側を走ったとして守備妨害のジャッジを下し、ゲームセット。日本一が決まり、マウンド付近でソフトバンク選手が抱き合う中、和田監督は猛烈に抗議を繰り返したが判定は覆らなかった。
夢を絶たれた指揮官は憔悴(しょうすい)しきっていた。「審判の判定だから仕方ないけど、邪魔しにいってるわけじゃないから…。でも、選手たちは目いっぱい戦ってくれた」。釈然としないジャッジでの終幕。割り切れなさを引きずりながら、必死に現実を受け止めようとする姿が痛々しかった。
低迷する打線を打開するため、虎将は動いた。1番にマートンを置き、5番に福留、6番に西岡を据える新オーダーを組んだ。エンドラン、盗塁を何度も仕掛け、本塁をこじ開けようと試みたが、固く閉ざされた扉を開くことはできなかった。
「じっとして同じやられ方をするわけにはいかないんで。打順を変えて、動いて打開しようとしたんだけど。もう1回、甲子園に帰りたかった。ソフトバンクは強かったわ」。今季限りで退任する秋山監督と握手を交わし、来年必ずこの舞台に戻ってくると誓った。
シーズン2位からの下克上は成し得なかったが、ポストシーズン11試合で体感し、体得したものは、10年ぶりのリーグ制覇を狙う来季に向けたかけがえのない財産だ。
「9月の6連敗から、もう1回という気持ちでやってきたし、大一番で力を出せた。日本一にはなれなかったけど、選手たちはひとつの殻を破ったと思う」。悔しさと反骨心。目の前で見せられた胴上げ。まぶたに焼き付けた光景が糧になる。宿敵・巨人を倒す新たな旅が、今始まった。