陽川一発締め 和製大砲誕生の予感
「阪神紅白戦、白組5-0紅組」(19日、安芸)
阪神・陽川尚将内野手(23)が19日、安芸市秋季キャンプで行われた紅白戦で、弾丸ライナーの豪快な一発を放った。今季2軍監督として指導にあたった平田勝男ヘッドコーチ(55)は、「目指すはおかわり君」とさらなる飛躍を期待。目標の来季1軍キャンプ、三塁の定位置奪取へ、また一歩大きく前進した。
弾丸ライナーが、左翼席を覆うネットに突き刺さった。今キャンプ最後の実戦となった紅白戦。白組の「4番・三塁」で先発出場した陽川が、豪快な一発をお見舞いした。
「追い込まれていたんですけど、うまいこと体が反応しました」。七回、先頭で打席に立ち、左腕・山本に2球で追い込まれた。ここで平田ヘッドコーチから「こっからやぞ」と声が飛んだ。陽川は冷静に選球し、「弾道が低かったので入ると思わなかったです」と5球目を捉えた打球は失速することなく、フェンスを越えた。
初回に1点を先制し、なお1死二塁では、岩貞の直球を完璧に仕留めて、左前適時打を放った。掛布DCに指導され、体の軸を意識したスイングの習得に取り組んだ今キャンプ。「それが結果につながっていると思う。シーズン中は打ち損じも多かったけど、今は1球で仕留められている」と反復練習で得た手応えを、今キャンプ最後の実戦で証明した。
この日キャンプに合流した平田ヘッドコーチも成長を感じ取った。「あのホームランは見事。目指すはおかわり君かな。ああいう感じになってくれるのが理想だよ」。今季2軍監督として見守ってきた“恩師”は満面に笑みを浮かべ、本塁王を5回獲得している西武・中村のような長距離砲への飛躍を願った。
シーズン中も、陽川に厳しく接してきた平田ヘッド。将来を見据えてファームの「4番」に起用。ティー打撃時は自身がボールを上げるなど、徹底的に付き添った。ただ、10月のフェニックス・リーグでは精彩を欠き、「全然工夫が見られない」と4番を剥奪した。
すべては期待の表れだ。21Uワールド杯を終えて、約3週間ぶりに陽川を見た平田ヘッドコーチが発した虎のおかわり君を目指せという言葉は、この秋の頑張りに対する、最大級の賛辞でもある。
特守が終わり、陽川は冷静に言った。「1日、1日を大切にしたい」。来春1軍キャンプスタートへ、視界は開けた。三塁奪取が目標となる2年目のシーズン。背番号55が、和田虎を熱くする。