岩田 雄たけび0封“勝ち”ある好投
「阪神1-0中日」(28日、京セラ)
思い切って、左腕を振り下ろした。0-0の七回2死。走者を一、三塁に背負っていたが、恐れず、ショートバウンドのフォークを2球続けた。絶妙のコースに代打・福田のバットが空を斬る。アドレナリン全開の阪神・岩田稔投手(31)は雄たけびをあげ、左拳を2度、突き上げた。
「同点の場面だったので、ここで0に抑えないといけないと思っていました。最初はバタバタしたけど、最終的には、自分の投球ができたと思います」
白星はつかめなかったが、134球の熱投は色あせない。初回、二回はピンチを招き、球数を要したが、三回以降は持ち味を存分に発揮。キレある直球、変化球を低めへ集め、内野ゴロのアウトを重ねた。「今日は岩田のゲーム。何とか勝ちを付けてやりたかった」。8回5安打無失点の好投に和田監督は賛辞を惜しまなかった。
岩田自身の中では一カ月以上前に、シーズンが“開幕”していた。
2月13日。実戦初登板となる紅白戦を2日後に控え、「1回でも失敗したら、去年みたいなことになるから」と危機感を口にした。昨季、開幕直前の登板で大乱調。ローテを剥奪された悪夢は頭から離れない。
翌14日はブルペンに入らず、シーズンさらながらの調整で初登板に備えた。2回無失点で滑り出すと、実戦5試合で計20イニングを投げ、防御率1・80と安定。「最初から最後まで1軍にいること」を目標に掲げる今シーズン。文句なしの結果と内容で、開幕ローテをがっちりつかんで離さなかった。緊張感を持続できる心の強さが、今はある。
「(勝ち星は)巡り合わせだと思っています。自分の仕事をするだけです。明日からまた一生懸命やりたい」
試合後、岩田はうつむかず、前を向いた。次戦は4月4日、巨人戦。敵地東京ドームで今季初勝利を飾る。