福留9号同点ソロで流れ引き寄せた
「阪神4-2ヤクルト」(21日、甲子園)
バックスクリーンのてっぺんにある日の丸は、引きちぎれそうにたなびいていた。猛烈に吹く浜風を切り裂いた阪神・福留の打球は、右翼手の頭上を越す低い弾道でスタンドイン。「よく飛んでくれた」。淡々とダイヤモンド回る姿が、やたらと様になる。
こうちゃくしていた試合をグラリと動かした。二回に先制した打線は三回以降、走者を出しながら決定打が出なかった。1-2の六回、先頭打者の福留がカウント2-2と追い込まれてから、新垣の高め直球をジャストミート。一撃で試合の主導権を取り戻した。上本、今成の連打で新垣をKO。狩野の勝ち越し打につなげた。
値千金の9号同点ソロに、和田監督も賛辞を惜しまない。「球場の雰囲気も変わったし、流れを引き寄せられた。勝負が均衡し、(試合が)動かないところで打つのが孝介だ」とベテランの勝負強さに脱帽した。
過去何人もの左の強打者が泣きを見てきた。聖地の浜風をあっさり制しても、「今日は狩野君が打ったことが一番」とヒーローの名を挙げてさっさとロッカーへ引き揚げる。「勝ったことが一番だからね」。そのために自分がやるべきこと。それを知るからこそ、ここぞのところで頼れる男だ。