安藤吠えた!魂の12球で満塁和田斬り
「中日4-6阪神」(28日、ナゴド)
阪神・安藤が気持ちで勝った。流れを左右する分岐点。「素晴らしいバッターの和田さんで、気持ちで負けないように自分を信じていきました」。逃げることなく前に出る。思いきって懐に飛び込んだ直球で、手を出させない。鮮やかな満塁斬り。左翼席からの歓声を背に、安藤は力強く拳を握った。
「インコースの真っすぐしかないと。自分を信じて投げ込んでいい結果になりました」
2点差の六回2死満塁。岩田に代わってマウンドへ。和田に対して外角中心の勝負を挑むと、8球目でフルカウントとなり、そこから3球ファウルが続いて迎えた12球目だ。「どこかでインサイドにいかないとと思っていた。うまくツル(鶴岡)がリードしてくれた」。気持ちを込めた内角直球で見逃し三振を奪って、勝負ありだ。
続く七回も無失点。和田監督も「完全に流れを食い止めることができた」とたたえた。勝因は経験に裏打ちされた技術と強いハート。あらためて感じた思いがある。開幕前、一冊の本を読み込んでいた。
「簡単には言っちゃいけないかもしれんけど、すごかったな。あの精神力というか」
それは、同じ大分出身で義足のアスリート・中西麻耶の半生が描かれた「ラスト・ワン」(著・金子達仁)という一冊。右膝から下を失いながらも、アスリートとして生きる壮絶な人生が胸に響いた。「あの気持ちがすごい」。軽々しくは言えないが、学んだものはある。最後は気持ち。それは投球にも生きている。
通算60ホールドは球団歴代5位タイとなった。敵地でのヒーローインタビュー。「僕でいいのかなと。すみません」。恐縮しながらスポットライトを浴びた。そんな姿を、同じリリーフ投手らがベンチに残り、ほほ笑みながら眺めた。窮地を救った大きな背中。頼れる男がチームを支える。