バッター金本監督!ド迫力“復帰”
「阪神秋季キャンプ」(2日、安芸)
阪神の金本知憲監督(47)が2日、キャンプ初日から2日連続でブルペンを視察した。二神、歳内の投球には自ら打席に立って辛辣(しんらつ)に弱点を指摘。カウントを設定し、真剣勝負を要求した。特に歳内には福原、安藤に引導を渡せ!とゲキを飛ばし、成長を促した。「勝ちながら再建」を唱える新指揮官が迫力満点の「打者復帰」でブルペンの空気を変えた。
22歳右腕にとって練習でこれほど重圧を感じたことはないだろう。ランチ前、ノックバットを手にした金本新監督がブルペンに入ると、瞬時に空気が変わった。捕手の後ろに立ち、歳内の投球に目を凝らしていた背番号6はスッと立ち上がり、打席へ歩を進めた。
「この球じゃ振らん!」。4球目のフォークに踏み込んだ指揮官は首を横に振り、勝負球の軌道をばっさりと切り捨てた。さらにフルカウントからの6球目フォークを見送り、「フォアボール、フォアボール。ひとつ前のインコース真っすぐは完全にホームラン。バッター誰だと思ってるの(笑)」。“打者復帰”の目的は形だけの激励…ではなかった。
「歳内は打倒福原、打倒安藤で燃えているみたいだから…。よしじゃあ、オレも本気の打者目線で見てやろうと思って。本当にこれで福原、安藤に引導を渡せるのかなと思って見に行きました」
今季、中継ぎとして29試合に登板し1勝1敗、防御率2・62を残した4年目の若虎をネット裏の解説席から見てきた。未完成ながらポテンシャルは十分。期待が大きいからこそ助言も辛辣になった。
プロ野球歴代7位の通算2539安打、同10位の476本塁打-球団史に燦然(さんぜん)と輝くレジェンドを目の前に、硬くなるな!とは無理な注文。「(オーラが)怖かったです」。歳内はストライクが入らず、打者2人目の設定ではストレートの四球。さらに3人目の初球直球が真ん中に入ると、「ド甘(あま)!」と一喝。フルカウントになったところで打席を外れ、片山ブルペン捕手に打者交代。「もう、思いきりぶつけてええよ(笑)」とアニキ節をさく裂させた。緊張が解けた歳内は6球目、こん身の直球をズバッ。鉄人監督は「ナイスボール!」と、最後の最後に笑みを浮かべた。
「福原と安藤に引退祝いを持って行けるように頑張れ。ちゃんと、自分でお祝い袋を用意するんだぞ」
監督就任会見で「不安は福原と安藤の年齢。福原はもう40歳でしょ」と語っていた。「勝ちながら再建」という険しい命題を自らに課している。「投手は指導できない。打者目線で言えることは言う」。現役時代と遜色ない迫力とオーラ。「金本の目線」こそブルペンの希少な財産だ。