虎の守護神誰に…台頭待たれる
金本阪神に超難題が浮上した。守護神問題だ。呉昇桓が不法賭博に関与した疑いで、交渉が打ち切りとなり退団。2年連続最多セーブに輝き、通算80セーブを挙げた守護神の穴はあまりに大きい。
能見は表情をゆがめ、声を絞り出した。
「さみしいよね。あれだけタフで、イニングもいける投手は他にいない。人間的にも一生懸命頑張って、コミュニケーションをとろうというのが伝わってきていた。残ってくれるものだと思っていたから残念。そこを(先発が)補うのは大変。2年連続セーブ王はなかなか補えない。重要なポジションであれだけやってくれたわけですから、簡単には穴は埋まらない。残ってくれるものだと。くぎを刺してたんだけどね。待ってるよと…」
阪神は3年前も同じ窮地に陥っていた。当時の守護神・藤川がメジャーに挑戦。守護神候補に能見の名前も挙がるなど混迷を極め、最後は久保(現DeNA)に落ち着いた。ただ先発と抑えの役割はまるで違う。シーズン途中からはセットアッパー福原がクローザーにまわり、14セーブをマークした。
来季から投手キャプテンに就任する福原は「首脳陣から言われたところで仕事をする」と頼もしく言う。もちろん、守護神候補の1人だ。一方で、セットアッパーとクローザーの違いをこう語る。
「試合の最後を締める意味で違う。先発の勝ち星、打者の勝利打点も背負うから。セットアッパーであれば、逆転されても、もう1イニングある。そこで再度逆転できるかもしれない。でもクローザーは失点した時点で試合が終わってしまうこともあるから」
今月28日で39歳。来季は40歳シーズンだ。「守護神をやりたい?そういう気持ちもあるけど、内心、若い子が出てきてもいいと思う」と話したのは、切実な本音だろう。
結局、絶対守護神が君臨したこの2年間も若いクローザー、セットアッパー候補を育てられなかった。今季も福原61試合、安藤50試合、高宮52試合。ベテラン3人がブルペンの重責を担った。歳内が29試合、松田も30試合に登板したが、ポジションを奪うまでには至らなかった。
今シーズン、セ・リーグ優勝のヤクルトにはバーネット、2位の巨人には沢村がいた。パ・リーグを見ても優勝のソフトバンクはサファテ、2位日本ハムは増井が、安定した投球で試合を締めた。優勝争いに加わる上で、優秀な守護神は必要不可欠な存在だ。
球団は守護神候補の助っ人獲得を目指している。現時点では外国人がクローザーを務めることが有力だろう。だが、それでは根本的解決には至らない。数年後、また同じ問題を繰り返すはずだ。外国人を押しのけて、ポジションをつかむような投手の出現が待たれる。(デイリースポーツ・杉原史恭)