能見「ハズレの年」バッテリーで初星

 「阪神7-3中日」(26日、京セラドーム大阪)

 勝ちたかったし勝たせたかった。執念で導いた勝利のハイタッチの列。女房役の白い歯がこぼれていた。指揮官の笑顔も見えた。「(自分が)勝ったこともですけど、チームが勝ったことが良かったです」。狙い通りの1勝は、阪神・能見の粘りが呼び込んだ。

 初回2死一、二塁のピンチで平田を遊飛に仕留め、五回まで無失点。6回2失点で勝利に貢献した。金本監督の初勝利につなげたことには「何か縁があるかもしれないですね。太一もがんばってくれましたし」と笑顔。気持ちはそこにあった。

 公式戦の先発登板では初の岡崎とのタッグ。数日前のことだ。「太一が『もし組むことになれば迷惑かけるかもしれないですけど、よろしくお願いします』と言ってきた」。神妙に映った岡崎の表情で気迫は伝わってきた。うれしかった。

 共に04年ドラフト自由枠で入団。その時のことを忘れていない。「ハズレの年とか言われてね」。当時、注目を集めていた選手らは他球団に入団。そういった背景で「ハズレ」という言葉を耳にした。「でも僕も太一もまだ現役でやってるから」。忘れぬ劣等感と共に、岡崎と勝ち取った勝利に価値がある。

 「最後まで投げたかったですね。(完投への意識は)自分はまだもう少しできるというのを見せたかったし、キャンプからそれを目指してきたので」

 悔いを残した98球にも、金本監督は「一つ安心したのは、今日は完投するつもりだったと頼もしい言葉を聞いたこと。能見の1勝というよりは、その言葉の方がうれしかった」と称えた。プロ1年目から金本監督が引退するまで、ロッカーがずっと隣だった関係性。そこに縁がある。

 「昔からいろいろアドバイスももらったから」。金本監督と岡崎と。12年分の思いがつまった白星となった。

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