藤浪149球!完投逃すも意地の初星

 「ヤクルト2-6阪神」(29日、神宮球場)

 完投勝利は逃したが、149球の熱投は称賛に値する。今季初登板の阪神・藤浪晋太郎投手(21)は九回、あと1死が取れずに降板。最後はマテオのリリーフを仰いだが、きっちりとゲームを作り、チームを3連勝に導いた。8回2/3、2失点は胸を張っていい。「正直悔しい」。完投できなかった無念は次回、晴らそう。

 後ろ髪を引かれるような思いで、マウンドを後にした。シーズン初登板初完投まであと1人。ところが、打球は無情にも、足もとを抜けていった。最後の1死を奪えず、藤浪は天を仰ぎ、唇をかんだ。

 「正直、完投できなくて悔しいというのが一番です」

 5点リードの九回、金本監督に続投の意思を聞かれ、「もちろん行きます」と返した。127球を投じていたが「余裕は全然、ありました」とケロリ。ただ相手は昨季の王者。意地を見せられ、2死一、二塁から、畠山に中前適時打を浴びた。

 「長いイニングを投げてほしいという意味で火曜日を任されている。あと1人だったので投げたかったです」

 勝つだけじゃ満足できない。今季初勝利の味はちょっぴりほろ苦かった。エースの心意気に指揮官は「完投したかっただろうな。中継ぎのために完投したいというその気持ちを大事にしたかった。149球?さすがに藤浪の肩が心配。気持ちより、体を優先した」と心情を思いやった。

 1月上旬、イベントで昼食を共にした金本監督から「開幕投手にこだわりはないか?」と意思を確認された。「はい、まったくないです」と即答すると、指揮官も静かにうなずいたという。開幕戦は特別であっても、143試合中の1試合に過ぎない。それよりシーズン終盤の大一番で勝つことが重要。「監督も同じ考えでした。あのとき、開幕投手はないなと思いました」。欲しいのは自身の名誉ではなく、チームとしての優勝だけだ。

 指揮官の期待に応えるためオフは初めて1人で自主トレを敢行。過去3年の経験を踏まえて、オリジナルのトレーニングメニューを作成した。栄養学、解剖学の知識を生かし、サプリメント、プロテインを効果的に補充。肩、腕、胸と、背中と上半身を3日間に分け、みっちりと鍛え上げた。年末の帰省後も連日、ジムへ愛車を走らせた。4・5キロ増の96・5キロにスケールアップした肉体は欠かさず続けてきたトレーニングのたまものだ。

 16年初登板は8回2/3を投げ8安打2失点。最速151キロの直球にすべての変化球を交えて、ツバメを狩った。「チーム自体、すごくいい雰囲気で、野球をやっていると思う」。連勝のバトンをつなぎ、藤浪も「超変革」の波に乗った。

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