5番ゴメス連夜の3ラン!もう10打点
「ヤクルト8-4阪神」(30日、神宮球場)
明日へつなぐアーチだ。燕軍団の反撃に遭おうとも、黙って敗れるわけにはいかない。マウロ・ゴメス内野手が意地の一撃で、今季初勝利の瞬間を待つ右翼スタンドに静寂をもたらした。
「自分としては積極的にいこうと思って打席に入っていた。いい球が来たので、強いスイングができてよかったよ」。場面は7点ビハインドの土壇場九回だ。1死から一、二塁の好機をつくり、5番・ゴメスに打順が巡る。その初球。ヤクルト4番手・徳山が投じた137キロ真ん中低めの直球を完璧に捉えた。
滞空時間の長い飛球が左中間席に消える。冷たい風が吹く神宮の杜。劣勢の試合を見せられてきた虎党を、一気に熱狂の渦に導いて見せた。
2試合連発となる3号3ラン。今季の本塁打はすべて3ランとなり、開幕から5試合を経過した時点で早くも10打点。打点王に輝いた来日1年目の14年(開幕5試合で5打点)をはるかに上回り、驚異のハイペースで打点をたたき出している。
それでも自身の記録より、得点機へと導いてくれる仲間たちへの称賛を忘れない。「自分の前の打者が塁に出て、いい形をつくってくれている。結果的に、いいホームランが打てていると思う」。その言葉が、打線の状態のよさを表している。
金本監督が掲げる「超変革」。それはゴメスにも訪れていた。同点に追いついた四回2死。一走・ゴメスが果敢に二盗を狙ってスタートを切った。惜しくもアウトにはなったが、スタンドからは驚きの声が漏れる。
「サインが出ていたから何とか成功させたいと思っていたんだけど、ああいう形になって残念です」と悔しさを隠せないゴメス。オープン戦から積極的な走塁が目立ち「(走塁が)大事なのは打撃や守備と一緒」と、言葉に力を込めてきた。
そうした姿が、一昨年は打率・362と好相性だった神宮で、再び打棒爆発の気配を漂わせる。「このいい状態を続けていきたいね」。試合後に球場を支配していたのは燕の勝利ではない。猛虎が見せた変革の余韻だ。