鳥谷やっと出たV撃!金本予カ~ン的中

 「DeNA0-5阪神」(2日、横浜スタジアム)

 長いトンネルを抜け、歓喜を引き寄せた。阪神・鳥谷敬内野手(34)が六回2死満塁で先制の中前2点適時打を放ち、チームに4試合ぶりの勝利をもたらした。自己ワーストの25打席連続無安打と苦しんでいた虎の主将。打撃上昇へ確かな感触を得た男が、金本阪神にさらなる勝利を運ぶ。

 その瞬間、乱舞した虎党は見逃したかもしれない。二塁ベース上のゴメスが大きなアクションで主将へ拍手を送ったときだ。冷静沈着な男が一塁で小さく左拳を握っていた。劇的に試合が決着してもポーカーフェースを崩さない鳥谷が、希少なガッツポーズでドミニカンの祝福に応えた。

 エープリルフールの悪夢とグッバイした。均衡を破ったのは六回だ。1死から横田、福留の安打、ゴメスの四球などでフルベースになると、結果にソッポを向かれた6番打者が、久保康の外寄り速球を中前へかっ飛ばした。三塁走者のヘイグ、38歳福留も二塁から全力生還。前夜のサヨナラ敗戦をリセットする快打に金本監督は手をたたき、ベンチ前で投球練習していた岩貞も拍手を送った。

 「チャンスだったので、そういうことは考えずに思いきっていこうと思っていました」。試合後、鳥谷は決勝打を冷静に振り返った。前2打席凡退で連続無安打は自身ワーストの25打席まで伸びていた。開幕2試合目に2安打して以降、5試合音なし。プロ入り後経験のない、長いトンネルだった。片岡打撃コーチが「苦しかったと思う」と心情を察したが、本人は「仕留めていた感じはあったので…」。相手好守に阻まれた前打席の左中間ライナー(中飛)で好感触を得て、負のスパイラルを断ち切った。

 直前五回のディフェンス。倉本の三遊間への痛烈なライナーに横っ跳びした。グラブからこぼれ落ちそうな白球を離さず、回転好守。何が何でもの気迫がバットに乗り移った。

 昨年10月20日、前日就任したばかりの金本監督から甲子園クラブハウスで手招きされた。「トリが変わらんとチームは変わらん。実績、年数、年齢を考えた時にすべてが物足りなさ過ぎる」。絶対リーダーが昨季打率・281、6本塁打、42打点…。「すべてにおいて変わってほしい」と説かれ、うなずいた。

 そして迎えた3・25。開幕戦を1時間後に控えた京セラドームのロッカーで鳥谷は全員に訴えた。「皆一つになって、泥だらけになって戦っていきましょう!」。四藤社長、金本監督に続いた声出し。出陣のハイタッチを終え、気迫十分の選手が歓声に包まれたのは主将が腰をかがめ、おどけたガッツポーズを見せたときだ。意外なパフォーマンスに場内はドッと沸き、一丸ムードは最高潮に達した。

 「(バットの)ヘッドの振り抜けがよくなっていたから、そろそろかな…と。やっとね。やっと、鳥谷!」。変身した主将のカムバックに金本監督の声がいつもより弾んだ。

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