「阪神２－６広島」（９日、甲子園球場）

　怒りが抑えきれない。阪神打線は八回途中まで１２奪三振と好投の岩貞に報いることができず、延長十回に４失点で惜敗。試合後、阪神・金本知憲監督（４８）は「打たなさ過ぎ。工夫がなさ過ぎる」とわずか２安打の打線に厳しい言葉を連ね、３連続四球を与えた５番手・金田の２軍降格を決めた。必死に、遮二無二にプレーできない者は要らない。虎の将は、選手たちに戦う姿勢を問うている。

　金本監督は据えかねた怒りを隠さなかった。矛先を向けたのは同点打を浴びた福原、決勝打を献上した榎田…ではない。開口一番、淡泊に映った攻撃陣を容赦なく突き放した。

　「打たなさ過ぎ。昨日の八回までときょうの十回まで…江越の本塁打２本くらいでしょ。全体的に工夫がないような気がする。ちょっとピッと投げられ（好投され）たらもう手も足も出ない。そこが去年のキャンプから一番の課題なんだけどね。真っすぐに強くなる、という…。まったく強くなっていない。意識の問題だけど、工夫がなさ過ぎる」

　岩貞の奪三振ショーに酔った４万６３５３人大観衆は２点を守りきれなかった終盤に大きなため息を漏らした。だが、２安打に封じられた延長１０イニングを振り返れば、敗戦の焦点は明らかだった。

　四回に江越が黒田を撃ったバックスクリーン弾以外、最後まで見せ場は訪れなかった。もっと言えば、劇的なサヨナラ勝利の陰に目をつぶりがちだが、前夜も九回を迎えるまでＨランプは江越の一発と高山の甲子園初安打のみ。指揮官は「結果」ではなく、そのアプローチが気に入らなかった。

　エース級の攻略が容易でないことは自身の経験上イヤというほど分かる。それでも、だからこそ打席で何とかしようというアイデアや果敢な姿勢を示してほしい思いが募る。

　「岩貞があんなにいい投球をして、勝ちをつけてやれなかったのがね…。打たれて負けるとか、（打者が）工夫して、集中して、執念を見せて打てないなら仕方ない。力対力の勝負をしているんだから。力がないということ。勝負に負けたということだから。そういうものは必ず伝わってくる。でも、今は伝わるものがないような気がする。僕には伝わってきていない」

　プレシーズンの戦いでは意図的に憤慨し、覇気を促したこともあったが、開幕後ここまで怒気をにじませた会見はない。それほど、歯がゆかった。十回、押し出しを含む３四球で戦意をそいだ金田には「２軍調整？そうなるんじゃないの。伝わってくるものが何もない」と酷評した。

　「執念は植えつけないといけない。何が何でもという気持ち、精神的なところを軽く見てはいけない。淡々と試合をこなすような姿は許されない」。就任会見でそう語った。

　「明日もいい投手（福井）がくる。さあ、どうするか。いくらコーチとか僕が言ったって打席に立つのは選手。選手がそういう意識とか気持ちを持たない限りは同じことになる」。対戦一回りを終える節目。金本監督は変革途上の選手に大きな宿題を課した。