陽川、プロ初打席初安打 指揮官も称賛

 「中日6-0阪神」(15日、ナゴヤドーム)

 阪神が今季2度目の完封負けで3連勝ならず。単独首位となるチャンスを逃し、2位タイへと後退した。重苦しい試合展開の中、若虎がキラリと輝いた。陽川尚将内野手(24)が五回の守備からプロ初出場。七回のプロ初打席で左前へプロ初安打を放った。大砲候補がようやくその第一歩を踏み出した。

 必死にすくい上げた。陽川が振り抜いた打球は左翼・工藤の前へ落ちた。「必死に食らいついていくだけだった」。プロ初出場初安打をマークした瞬間を、そう振り返った。

 五回の守備からヘイグに代わって途中出場し、七回1死一塁でプロ初打席を迎えた。カウント1-2からジョーダンが低めに投じた131キロ変化球に食らいついた。ボール球だったが、バットは反応。金本監督は「今日は北條が速い真っすぐ打って、陽川が苦手な変化球を打って。その2つに関しては良かったことかな。救われたというとおかしいけど、オレの気持ちがね。2ついいところですね」と称賛した。

 守備でも好判断。六回2死満塁、工藤の三塁線へのゴロをあえて捕らずにファウルにした。「もう(アウトにするのは)無理だと思ったんで」。捕っていれば内野安打で追加点を与えていた。仕切り直しで高宮は工藤を見逃し三振に仕留め、窮地を脱した。

 「アピールしないと終わる」。今オフ、陽川は連呼していた。同期入団の梅野、岩崎らが1年目から1軍で結果を残す中、2年間で1度も昇格できず。ウエスタンでも打率・241、・213と下降線をたどり、昨季まで2軍を担当していた浜中打撃コーチからは「今年、結果を出せんかったらアカンぞ」と言い渡されていた。

 期待の裏返しでもあった。金本監督の就任が発表された翌日、みやざき・フェニックスリーグ期間中だった昨年10月18日の日本ハム戦(日向)。4打数無安打ながらも浜中コーチは声を弾ませた。

 「よく振れていた。金本さんが好きなタイプの選手だと思うよ」

 予言通り、翌19日の就任会見で金本監督は陽川を期待の選手に指名。自身も指揮官の思いに呼応し、無休でバットを振り込んだ。開幕1軍は逃したが、ウエスタンで本塁打と打点のトップに立ち、初昇格した教え子に「気持ちで打ったヒット」と浜中コーチは目を細めた。

 それでも陽川に笑顔はなかった。チームは完封負けし、自身も九回は空振り三振に終わった。「あしたも必死に結果を求めて頑張ります」。次は勝利に導く一打を放つ。

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