能見がチーム初完投“マツダの鬼”健在
「広島2-6阪神」(24日、マツダスタジアム)
1999本目の安打はご愛嬌だ。4点リードの九回、2死二塁。阪神・能見が新井に左前へ運ばれ、地鳴りのような歓声が球場を支配した。それでもマウンドの能見は冷静だ。最後はエルドレッドを空振り三振に仕留めて、チーム完投一番乗りを果たした。
「その前がね、二回で代わっているので。何とか長いイニングを投げたいなと思っていた。味方がいい感じで得点してくれたので、本当に良い感じで投げることができました」
前回15日・中日戦(ナゴヤドーム)は2回9安打6失点でKO。「もういいよ。そっとしておいて…」。登板までが長く感じられ、冗談交じりにそう話したこともあったが、そこは百戦錬磨のベテランだ。今季2度目の広島戦に向けてコンビを組む岡崎と意見交換。フォークを多投し、広島打戦を惑わせると、9回を5安打2失点にまとめた。マツダスタジアムでは、通算13勝5敗、防御率1・69。今季初登板の好投で、“マツダの鬼”の健在ぶりを示してみせた。
マウンドからの景色は360度、赤く燃えていた。試合前の時点で2000安打まで、残り3本としていた新井フィーバーはすさまじかった。08年から14年まで7年間、一緒にプレー。エースと主砲としてチームを支え、気心知れた仲だ。登板前には「打たれないようにしたい」と意気込んだ。結局、4打数で2安打されたが、快挙達成は阻止。ヒーローインタビューの最後は、「別のところでやっていただいたらと思います」と温かいエールで締めくくった。
金本監督が「点差もあったし、安心して見ていたよ。能見は名古屋以外、ずっと良かったから。ほとんど2(失)点以内でしょ。(5試合で2勝2敗だが)内容は4勝1敗だよ」と絶賛する内容。通算86勝目は井川慶と並んで球団歴代11位タイで、通算1175奪三振は井川を抜いた。「リリーフも(肩を)作っていないと聞いていたので良かった」と能見。開幕直後の勢いを失いそうなチームを36歳のベテランが救った。