陽川プロ1号が逆転V弾!快投今永撃ち
「阪神2-1DeNA」(29日、甲子園球場)
でかした孝行息子-。一直線に伸びる弾道は、夢と希望であふれていた。阪神・陽川尚将内野手(24)が五回、中越えにプロ1号となる決勝の逆転2ラン。「最高で~す!!」。プロ初のお立ち台で絶叫した。一振りで戦況を劇的に塗り替えた値千金の一撃。今日も最高なゲームを頼んだで。
乾いた打球音が熱気を呼び覚ます。沈滞ムードが漂っていたファンは、一気に息を吹き返した。陽川がプロ初本塁打となる逆転1号2ラン。長距離砲としての第一歩を祝う大歓声と拍手が鳴りやまなかった。
「すごく気持ちよかった。正直、鳥肌が立った」
1点を追う五回だった。四回まで無安打9三振と抑えられていたDeNA・今永に対して、先頭の鳥谷が四球を選んだ。
「チャンスを広げようと思った」。カウント1ボール1ストライク。ど真ん中のチェンジアップを振り抜いた。「角度がよかったのでいったかな、とは思った」。打球はバックスクリーン左へ到達。通算15打席目での初本塁打は、パンチ力を示す弾道だった。
打席に入る前、金本監督から助言があった。「『今永の直球を引っ張るのは難しい。だから、センター返しを心掛けていこう』とアドバイスをもらった。それがいい結果につながったんだと思う」。
28日の巨人戦は延長十二回1死二塁で3球三振。サヨナラの絶好機でふがいない結果に終わっていたが、この試合は「6番・三塁」で今季3度目の先発。「こうしてチャンスをいただいたので、一打席一打席を大事にしてプレーしたい」。背中を押してくれた金本監督に、決勝弾で応えられたことが喜びを倍増させた。
2軍でも首脳陣の後押しがあった。もともと物静かで、あまり感情を表に出す性格ではなかった。掛布2軍監督はおとなしい男に殻を破らせるために、今季から2軍でゲームキャプテンを任せた。
大卒3年目の24歳。立場を与えられると、2軍ではプレー以外でも自然と自覚が芽生えていった。「僕より若い子が投げる時は、特にマウンドへ行って声を掛けるようにした。周りを見ないといけないので視野は広がった気がする」。メンタル面でも“超変革”したことが、1軍で活躍するきっかけとなった。
プロ初のお立ち台には同期の岩貞と立った。黄色いスタンドを見渡すと、感情を隠さずに「最高で~す!!」と絶叫。ゴールデンウイーク初日。4万6185人の視線を独占した陽川はプロ入り後、最高の笑顔を見せた。