岩貞 涙の2勝目…故郷熊本へ届けた

 「阪神2-1DeNA」(29日、甲子園球場)

 歓喜のゲームセットの瞬間、阪神・岩貞祐太投手はガッツポーズしながら、バンザイした。待望の今季2勝目は4試合ぶり。勝利の味から遠ざかっていた分だけ、うれしさが込み上げた。

 「(最終回のピンチも)信じているので。祈っていましたけど、勝って良かったです。やっぱり勝ちが数字として付くのは、うれしいことですね」

 自らの失策から先制を許したが、初めてバッテリーを組んだ原口との意思疎通はバッチリだ。追い込んでからチェンジアップだけでなく、直球系も選択。DeNAとの2度目の対戦で「バッターを惑わせられた」と新たなスタイルを確立した。

 2-1の六回は無死三塁のピンチを背負ったが、1死から連続三振。踊るようにフィニッシュを決め、両拳を握って雄叫びを上げた。

 「陽川のホームランが出て、3人で抑えようとした矢先。江越もガッツあるプレーを見せてくれたので絶対に抑えようと思いました。全力で抑えることができて良かったです」。 決して本調子でない中、6回4安打1失点。金本監督も「何より勝ちが付いたのが、僕自身ホッとしました」と自分のことのように喜んだ。

 「海も山もあって、熊本は本当にいいところなんですよ」

 熊本地震前。岩貞は地元・熊本の話題になると声を弾ませていた。馬肉料理店「菅乃屋」の名物・馬刺しは絶品で、帰省した際は必ず足を運ぶほど。大自然に育まれ、学生時代は阿蘇へ涼みに出掛けた。大学進学と共に熊本を離れたが、地元を愛する思いは変わらない。だから、今回の地震に胸を痛めた。「菅乃屋西原店」は益城町にあり、食器などは店内に散乱したという。阿蘇の景勝地・草千里ヶ浜も大きな被害を受けていた。

 お立ち台では「つらい思いをしてる人がたくさんいる中で、自分ができることは本当に限られている。これからも支援をしながら、野球は一生懸命頑張っていきたいと思います」と目を潤ませた。地震後、3度目の登板でようやく白星を届けられた。トンネルを抜けた左腕が、今度は連勝街道を突っ走る。

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