狩野「僕らしい」必死走の代打適時打
「交流戦、阪神2-0オリックス」(14日、甲子園球場)
泥くさく放った。会心の当たりではない。それでも必死に食らいつき、結果を残した。額にしたたる汗が、狩野の勲章だ。「レフト前だったら、気持ちよくここに立てたんですけど…。でも打点が付いて、よかったです。僕らしいヒットだったと思います」と声を弾ませ、拍手を浴びた。
見せ場は1点リードの七回だった。2死一、三塁。1ボール1ストライクから吉田一の129キロスライダーを引っ張った。左前に抜けようかという打球を遊撃・安達がキャッチし、二塁に送球したが判定はセーフ。スコアボードに「1」の文字が刻まれた。
前打者・大和がスクイズ失敗後に凡退し、オリックスに流れが行きかけていた。それだけに効果は抜群だった。「1点入ったら、こっちの流れになると思っていた。代打なんでシンプルに考えていきました」。
打点を挙げるのは3日・西武戦(甲子園)以来。代打適時打は5月25日・ヤクルト戦(横浜)までさかのぼる。ベンチに戻る際には西岡らとハイタッチし、喜びを隠さなかった。仕事人の働きぶりに金本監督も目を細めた。
「あそこは狩野を信頼して。さすがというところで、ここというところで追加点のタイムリー、よかったです」
グラウンドで闘志を見せた背番号99。だが球場を出ると5人の父の顔に戻る。5月5日・こどもの日は中日3連戦で名古屋遠征中。帰阪したら、プレゼントを渡すつもり…というわけではなかった。
「いやいや、しないよ。ぜいたくはさせられないよ」。苦笑しながら否定した。我が子を思うからこそ、厳しく接する。
今週の日曜日は父の日。愛息がほしいのは物じゃない。父の勇姿という最高のプレゼントを贈る。