中谷プロ初打点 6年目、覚悟の再出発
「交流戦、阪神4-8ソフトバンク」(19日、甲子園球場)
乾いた打球音とともに、弾丸ライナーがバックスクリーン方向へ伸びていく。0-5の七回1死三塁。阪神・中谷が放った打球はフェンス最上部に直撃し、三走・原口が生還した。プロ6年目、27打席目での初打点。目の覚めるような一打が、自身の「超進化」を予感させた。
「『何が何でも走者をかえそう』と思って打席に入りました」
七回の守備から途中出場。「このまま終わったらダメだぞ!」。円陣での金本監督の猛ゲキに、闘争心が湧き上がった。先発・武田からこの日初得点をたたき出し、九回の先頭では3番手・森の変化球を捉えて左前打。片岡打撃コーチは「中谷らしいスイングをしてくれた」と称えた。
昨年の正月。「もう、今年ダメだったら終わり」と覚悟を決めた。大振りだったバットの軌道を、右方向を意識したコンパクトスイングに変革。2軍戦で打率・290と結果を残し、その年の5月9日・広島戦(甲子園)でプロ初安打を放った。
だが、どこかもどかしさが残る。単打を狙う消極的な打撃が目立ち、首脳陣もそれが引っかかっていた。そこで今年4月、遠征に帯同せず鳴尾浜でミニキャンプを敢行。掛布2軍監督から「全部崩して、もう一度一からやっていこう」と声を掛けられた。
ステップ時に前傾する悪癖を矯正し、体を平行に回す打撃フォームを体にたたき込む。本来のフルスイングが戻るまで時間はかからなかった。掛布2軍監督も、納得顔だ。
「昨年数字を残して、そこから変えるのは勇気のいること。でも、やっぱり彼の魅力はロングも打てるところだからね。必ず1軍に必要な戦力になるよ」
中谷は「一日一日が必死なので、どの投手からも打っていきたいです」と力を込める。無限大の可能性を秘めた23歳が、「超変革」の一員に加わった。