梅野と小林 伝統球団の正捕手目指して
ライバルの存在が、時に成長を後押しすることがある。今季、3年目を迎えた阪神・梅野隆太郎捕手(25)と、同じくプロ3年目の巨人・小林誠司捕手(27)。運命的な“再会”から、互いに刺激し合う関係になっていった。ユニホームは違うが「正捕手奪取」という志は、共通する。
11年。当時、福岡大2年の梅野は同志社大との練習試合に臨むため、京都府京田辺市の同志社大グラウンドに向かった。待ち受けていたのは、大学球界ナンバーワン捕手との呼び声高かった主将・小林。梅野は「覚えていますよ。坂を上ったところにグラウンドがあってね」と懐かしむように当時を振り返る。
2年後の13年度ドラフト会議。梅野は4位で阪神に、小林は日本生命を経て1位で巨人に入団した。大学の練習試合で出会った2人は、伝統球団の新人捕手として、プロの舞台で再び顔を合せた。ルーキーイヤーは、梅野がチーム捕手最多の92試合に出場。小林も、開幕戦でマスクをかぶるなど63試合に出場した。
シーズン後の11月、2人はMLBオールスターチームと対戦する阪神・巨人連合チームで、チームメートとして戦った。次代の扇の要として、2人への期待は大きく膨らんでいた。
だが翌15年は、互いに苦しい時間を過ごすことになる。梅野は5月24日にプロ初の2軍降格。それ以後も1、2軍を行ったり来たりし、わずか56試合の出場にとどまった。一方、小林もリード面など課題を指摘され、度重なるファーム行きを経験した。
「梅ちゃん(梅野)、どうしてる?」。小林が、2軍の遠征先から記者に“取材”することもしばしば。梅野も「誠司さん(小林)、また打ってましたね」と、常にチェックしていた。
今季、小林は阿部の故障などもあり開幕から試合出場を続けている。首脳陣からの叱咤(しった)激励をしっかりと胸に刻み込み、正捕手への道をまい進している。一方、梅野は4月27日に出場登録抹消。代わりに1軍昇格した原口が、強打でレギュラーへの階段を駆け上がっている。
梅野は言う。「誠司さんと自分は、立場的に似ているところがあると思うんです。だからということではないんですけど、気にはなりますね」。現在も度々連絡を取り合っているという。
6月10日、梅野が再昇格を果たした。原口との捕手争奪戦を制し、虎の正妻を我が物としたい。小林も、同じ気持ちでレギュラーを目指しているのだろう。未来へと続く阪神、巨人の伝統の一戦。2人の若い捕手の成長からも、目が離せない。(デイリースポーツ・中野雄太)