原口V弾 甲子園で交流戦白星締め
「交流戦、阪神2-0オリックス」(20日、甲子園球場)
最後の最後にやっと出た。0-0の八回1死一塁から阪神・原口文仁捕手(24)が左越えへ6号2ランを放ち、交流戦最終戦を勝利で飾った。3日・西武戦(甲子園)からチームは14試合連続で本塁打がなかったが、自身初の「3番・一塁」で先発出場した男が終止符を打った。交流戦は7勝11敗の借金4で終了。24日から再開されるリーグ戦で、必ず巻き返す。
さまざまな負の連鎖を断ち切る一撃だった。0-0のまま迎えた八回1死一塁。原口の第4打席。カウント2-2からの5球目、佐藤達の130キロスライダーをコンパクトに振り抜いた。チームと虎党の思いを乗せた白球は甲子園の夜空に舞い上がり、左翼ポール際に吸い込まれた。
「入るかどうか微妙な当たりだったんですけど、皆さんの応援と風のおかげで入ることができました」。試合後のお立ち台で原口は、浜風と虎党の後押しに感謝した。
5月28日・巨人戦(東京ドーム)以来となる6号2ラン。終盤に飛び出した先制2ランが決勝点になった。敗れると今季ワーストを更新する借金6、加えて球団史上初の交流戦最下位の危機だったが、背番号94のバットが救った。
深刻だったチームの一発欠乏症も克服した。2日・楽天戦(コボスタ宮城)、鳥谷の5号ソロを最後に14試合連続ノーアーチ。12年4~5月に記録した球団ワーストに並ぶピンチだったが「僕も少し意識していた部分もあったので、良かったです」と安どの笑みを見せた。
何よりも金本監督の大きな期待に応えた。ゴメス不振の影響もあり、打力を買われて1軍では初めて一塁守備に就いた。打順も初の3番に抜てきされた。1、2打席目とも空振り三振。六回無死一塁での第3打席は送りバントのサインだった。
迎えた八回、指揮官の頭には代打・ゴメスの選択肢がよぎったという。「今年の原口は3打席目までダメでも、4打席目に結果を出すとか、引きずらないというか、途中からいい結果を出すことがあるので、そこに期待していました」。ベンチの我慢と期待に最高の結果で応えた。
文句なしのヒーローだが複雑な思いもある。球宴ファン投票の最終中間発表でも捕手部門1位をキープ。しかし、この日は自身がこだわり続ける捕手での出場ではなかった。しかも九回表の守備は退き、ゲームセットの瞬間はベンチで迎えた。
試合後は「それはこれからいろいろ感じると思います」という表現で悔しさをにじませた。「試合の時は役割があるので、そこでしっかりやるだけ。勝ちたいという思いでやっています」と切り替えて集中するのが信条だ。
降雨中止の振り替えとなったこの日の観衆は今季最少の2万6867人。お立ち台では「今日は忙しい中、球場に足を運んでいただいてありがとうございます。皆さんのために必死のパッチで打ちました!」と絶叫。次は24日から7・5差で首位を走る広島と敵地で対戦。再開されるリーグ戦に向けて虎党に夢と希望を抱かせる一発だった。