能見 気迫ビシ斬り!最下位危機救った
「中日2-3阪神」(2日、ナゴヤドーム)
負ければ最下位転落という危機を、ベテラン左腕が救った。先発した阪神・能見篤史投手(37)が序盤から飛ばし、6回を6安打9奪三振2失点の力投。11残塁と打線が拙攻を繰り返す中、踏ん張り続けて、勝利へ導いた。借金7と苦しい状況に変わりはないが、金本阪神は諦めてなどいない。まずは第3戦に勝って、カード勝ち越しといこう。
キャッチャーミットを突き上げた岡崎とは対照的に、左腕は表情一つ変えない。1点リードの六回2死満塁。最後は堂上のインハイへ、143キロ直球をズバッと決めた。能見らしい、糸を引くようなクロスファイヤー。鮮やかにピンチの芽を摘んだ。
「今日は最初から飛ばして、いけるところまでいこうと思って投げました。やることはやろうと思っていた」
内角に広いストライクゾーンを効果的に利用した。「太一がしっかり考えてやってくれた」。8試合ぶりにバッテリーを組んだ岡崎との呼吸もピッタリ。2点リードの二回、福田に同点2ランこそ、浴びたが、それ以降は得点を許さなかった。
怪物へのリベンジも果たした。試合前まで5打数5安打2本塁打と散々打ち込まれていたビシエドを3打数無安打2三振に。「状態も落ちているから」。試合後はそう謙遜したが、本格派左腕らしく、怪物相手に真っ向勝負を繰り広げた。
自然体の投球が功を奏している。37歳を迎えた今季は球数100球をメドにした登板が続くが、試合中に後ろを振り向くことはない。電光掲示板の表示は全く気にしない。「球数は全然、意識していないよ。点を取ってもらってから考えるものだから。(首脳陣に)配慮してもらってるからね」。だから球数がかさんでもイライラしない。この日も序盤から飛ばし、6回を6安打2失点、9奪三振。球数制限がある中で、きっちり94球にまとめてみせた。
名古屋-東京と長期遠征が続くが、エネルギーは満タンだった。6月19日「父の日」。甲子園で練習を終えて自宅に帰ると、長男・凌成君(5歳)から、プレゼントを手渡された。「手作りのメダルをもらったよ。学校で作ったみたい」。すくすく育つ長男の力作を眺めていると、自然とポーカーフェースの目尻が下がる。いつもテレビの前で応援してくれている最愛の家族へ、父の勇姿を届けた。
「今日は最初から飛ばしてね。持つのかなと思ったけど、何とか6回持ってくれてね。あの2ランだけでね。能見らしいキレのあるボールをバシバシ投げて。見てて気持ち良かったしね」
チームの連敗を2で止め、金本監督からも最敬礼された。これで今季5勝目。藤浪、岩貞、岩崎ら若手の勝ち星が伸び悩む中、白星を積み重ねている。猛虎の超変革は道半ば。苦しい戦いを強いられるチームをベテランが救った。