鳥谷弾も金本監督まだまだ認めない「その前までは…」
「巨人3-2阪神」(5日、東京ドーム)
本塁打を放っても首脳陣は満足していない。阪神の鳥谷敬内野手(35)が八回に右翼席へ約1カ月ぶりとなる一発をたたき込んだ。連続出場を続けるベテランにとって復調への兆しの一打と思えたが、金本監督からは褒め言葉はなかった。チームは2連敗で首位広島と13ゲーム差。きょう6日にも自力優勝の可能性が消滅する。
左翼スタンドの虎党から大歓声を浴びても、無表情だった。1-3の八回1死。3番手・マシソンと相対した鳥谷は、150キロ超の真っすぐをフルスイングで右翼席に運んだ。6月2日・楽天戦(コボスタ宮城)以来の6号ソロ。しかし三塁ベンチ前の祝福の列を前にしても、笑顔を見せなかった。
それもそのはず。最近5試合は20打数3安打、打率・150と極度の不振にあえぐ。この日も先発・内海の変化球にタイミングが合わず、3打席目まで凡打を重ねた。最後は「塁に出ることしか考えていなかった」と意地で打ったが、首脳陣の評価は厳しい。金本監督は「その前まで、全くノー感じだから」と言葉少な。片岡打撃コーチの表情もさえない。
「なかなか調子が上がってきそうで上がってこない。まだ凡打の内容が崩されすぎ。本来の感じからはほど遠いですね。いつも『これをきっかけに!』と言っているけど。もう(シーズンも)半分を過ぎているんだから。ああいうスイングを続けてほしい」
80試合に出場して打率・233、6本塁打、27打点。開幕直後から不振を極め、先月の交流戦でも打率・239とチームの軸としての働きはできなかった。さらに、遊撃の守備でも精彩を欠く。巨人・坂本に次ぐリーグ2位の10失策は昨季の14に迫る勢い。安定感のある守備は、自身の打撃にも好影響を与える。バットを復調の風に乗せる鍵は、ここにあるかもしれない。
久慈内野守備走塁コーチと試合前に取り組むノックは、基本が中心だ。地を這(は)うゴロも、高いバウンドも足を動かして体の前にグラブを出して捕球する。「硬くなると捕れないから。グラブを前に出して」と久慈コーチ。一から積み上げてきた守備をもう一度見直している。これ以上、恥ずかしい姿を見せることはできない。
この日は2-3で5位の巨人に競り負け、借金は9に膨らんだ。首位・広島とのゲーム差は13。6日にも自力Vの可能性が消滅する。鳥谷は「終わったことは取り返せないので。また、明日からがんばっていきます」と懸命に前を向いた。
まずは、自身の現状を打破することが先決。このままの窮状が続けば、連続フルイニング出場の聖域にも暗雲がたちこめてくる。この日の一発を、復調のきっかけにしなければいけない。最下位に沈むタイガースのキャプテンは、背番号1だ。諦めない姿勢を、ファンが喜ぶ全力プレーを、一番先頭に立って見せつけてほしい。