福留、孤軍奮闘7号ソロ 首位打者も射程圏内だ
「ヤクルト6-1阪神」(6日、神宮球場)
今季初の4カード連続の勝ち越しを狙ったが、猛虎打線が沈黙した。そんな中、気を吐いたのがベテランの福留孝介外野手(39)だ。四回に山中から右翼席へ弾丸ライナーで放り込む、自身2試合連発となる7号ソロ。この日は本塁打を含む2安打をマークし、打率は・328と上昇。打率部門で4位から2位へ浮上し、首位打者を射程圏内に捉えた。
表情一つ変えない。淡々とダイヤモンド1周する姿が頼もしい。ヤクルト山中に6安打完投負けを喫した中、福留がナインを鼓舞するような7号ソロ。最後まであきらめない。4番が唯一の得点をたたき出す孤軍奮闘だ。
「(山中に対して)嫌なイメージもなかったし、何とか少しでも早い回でと思った。ピッチャーが点を取られたときは野手が打ってカバーしないと。それが信頼関係だから」
先発メッセンジャーが5点を失った直後の四回だ。先頭で打席に立つと、サブマリンの111キロスライダーを強振。鋭い打球は燕党が陣取る右翼ポール際へライナーで消えた。二回の第1打席は右前へ。今季25度目のマルチ安打を決めた。続く3、4打席は凡退したが「自分の中でしっかりとアプローチできている」といずれも納得の当たりだった。
39歳のベテランが、首位打者争いを盛り上げている。8月は15打数6安打、打率・400。この夜も4打数2安打し、打率・328に上げると、ヤクルト・山田、DeNA・筒香を抜き去り、打率2位にランクイン。同1位の坂本は3打数3安打で打率・343まで上昇させたが、若手と繰り広げる争いは、ますます熱を帯びてきた。
21年前から夏男だ。95年高3夏の地方大会は8試合7発。高校No.1スラッガーとして注目された夏の甲子園でも大暴れした。1回戦・北海道工戦では満塁本塁打と2ランの2打席連続本塁打。「PL学園・福留」を全国に知らしめた。
「もう昔のこと過ぎて覚えてないな…」
本人の中ではすっかり過去の話だが、当時のインパクトは強烈。高校野球ファンの記憶は今なお鮮明だ。前カードのDeNA3連戦(横浜)では懐かしい顔と再会した。初戦の練習前、がっちりと握手を交わしたのは同級生の斉藤和巳氏(元ソフトバンク)と江尻慎太郎氏(同)だった。
「久しぶりに会ったよ。みんな元気やな」
旧交を温め、思わず頬が緩んだ。球界の“福留世代”も数少なくなってきたが、世代の中心は10代の頃と変わらず、まばゆい輝きを放ち続けている。
8-0と大勝した前日5日は休養日だった。「気を使ってもらっているし、自分が出るときは(起用に)応えられるように、続けてやっていきたい」。その言葉通りスタメンを外れた翌試合は33打数13安打、1本塁打、打率・394。まさに有言実行の活躍だ。3位DeNAが勝利したため、ゲーム差は「4」に開いたが、底を抜けたチームに焦りはない。4番がバットから再び、真夏の大反攻を開始する。