北條が連敗止めた 同点犠飛&V打!守備のミスをバットで返した
「広島1-2阪神」(10日、マツダスタジアム)
白熱する投手戦の均衡を破ったのは、期待の若虎だ。1-1の六回2死満塁で、北條史也内野手(22)が三遊間へ運んだ。高いバウンドの打球は遊撃への内野安打となり、勝負を決めた。6回2/3、1失点と力投したベテランの能見篤史投手(37)は7勝目。チームの連敗は3でストップした。
全力で一塁を駆け抜け、電光掲示板には「H」ランプがともった。決勝打を放った殊勲者は、北條だ。昨季は1軍戦1試合のみの出場に終わった22歳の若虎に、まばゆいばかりのカクテル光線が降り注ぐ。誰もが成長を認める男が、首位・広島に土をつけた。
「いろいろと考えてしまうと硬くなってしまうので何も考えずに。前の打席で安打を打っていましたし、いいイメージだけを持って打ちにいきました」
一進一退の攻防が続く1-1の六回2死満塁。先発・福井のフォークが甘く入ってくると、迷わずバットを出した。高いバウンドになった打球は三遊間へと転がり、遊撃・田中が捕球しても一塁はセーフ。内野安打を勝ち取り、鳥谷が勝ち越しのホームへ生還した。
二回1死一、三塁では、シュートを運んで同点となる左犠飛。五回1死は中前へはじき返し、すかさず二盗も決めた。2安打2打点の活躍に、三塁ベンチは沸き上がる。ただ、北條の胸には複雑な思いが交錯していた。
「守備でエラーをしてしまいましたけど、能見さんがその後を抑えてくれたので。なんとか走者をかえして、同点に追いつこうと思っていました」
初回2死二塁で、新井のボテボテの打球は三塁・北條の前へ。捕球したものの、握り替えをミスして今季9個目の失策。さらに、三回1死の場面ではルナの三ゴロをファンブル(記録は三塁強襲安打)。久慈内野守備走塁コーチは「軽率なプレーじゃないから。また、練習していけばいい」と背中を押した。それでも、決して満足できる守備ではない。
プロの世界に入り、鳴尾浜で奮闘した3年間は嵐のようなノックを受ける日々だった。捕球する際に地面から遠くなってしまう上体を、少しでも近づけるようにゴロ捕球など基本練習を反復。当時守備部門を担当していた筒井2軍打撃コーチは「もうやることは全てやったから。後は、1軍で経験して成長してもらうだけ」と話す。
掛布2軍監督は北條について「何事にもびびることがない。高校時代に甲子園を4回経験して、大舞台でも堂々とできる」と評価している。打率・255と低空飛行を続ける。今は、一流への階段を上っている途中だ。
「毎日必死でチームのためを思ってやっています。今度は甲子園でヒーローになれるように頑張ります」
プロ初のヒーローインタビューで語った今の心境。「必死」という言葉に、北條の思いは集約されている。