金本知憲が決断した夜 右投手先発も鳥谷外し北條起用
「阪神2-7広島」(17日、京セラドーム大阪)
対広島6勝17敗。阪神・金本知憲は歯がゆさを込め、「力の差」と言った。仮に広島が四半世紀ぶりに優勝を飾るなら、助演賞は間違いなく虎。貯金22の半数を献上しているのだから、鯉党は「阪神さん、ありがとう」と手を合わせるだろう。なぜ、今年は広島にやられっぱなしなのか。こよいも居酒屋で愚痴をこぼすファンの赤ら顔が目に浮かぶが、理由はシンプルだ。エースが勝てないのだから…。
藤浪晋太郎は今季対広島に5戦投げて0勝4敗。被安打も失点も対戦別ワースト。そしてセ・リーグワースト61四死球と苦しむ22歳はやはり、広島戦の与四死球が21と最も多い。昨季まで3年連続2ケタ勝ってきたプラチナ右腕が最も投げにくい相手…それは数字で示せば丸佳浩ということになる。この夜も初回に今季5つめの四球を与え、これがカープ打者に対する最多与四球。藤浪対丸はこの試合まで通算・365。14年シーズンには・583と打ち込まれた、いわゆる天敵なのだ。
さて、藤浪が嫌がる丸とはどんな成長を歩んできた選手なのか。07年ドラフトで千葉経大付から3位指名された丸が脚光を浴びるようになったのは11年。レギュラー定着のきっかけにしたのは阪神戦だった。プロ4年目の3月、広島での練習試合で藤川球児から本塁打を放った男は一気に飛躍。菊池涼介とともに不可欠なヒットマンとして君臨するようになる。
高卒4年目がターニングポイントとなった丸は言う。「当時は、なぜ打てたのか、なぜ打ち取られたのかもよく分からなかった。野村(謙二郎)監督から『今分からなくても、後々分かる』と言われて…。まだ、使ってもらっていたころは守備も走塁も打撃もテンパりまくりでした。僕の場合、何年目で壁を越えたというより慣れが大きかった。1軍の雰囲気に慣れてしまうのが一番。試合に出ないことには慣れない。気付いたら緊張しなくなっていて…」
阪神で4年目と言えば、藤浪ともう1人…。実はこの日、金本は大きな決断をしていた。対左投手の低打率を理由にベンチスタートさせていた鳥谷敬を右腕・福井優也の先発でもスタメンから外し、北條を起用したのだ。
北條がまだ使ってもらっている選手だからこそ、厳しく書く。初回は福留の右前打で二塁から生還しなければならないし、藤浪が天敵の丸に勝ち越し打を浴びた五回は、鈴木の打球をなんとか止めなければならない。丸の言葉を借りれば、まだよく分からない状態でフィールドにいるのかもしれない。テンパりまくって一流に…。そうなれる素材だから、金本は主将を外してまで北條を起用する。
=敬称略=(阪神担当キャップ・吉田 風)