原口快挙!31年ぶり虎生え抜き捕手10号
「中日9-3阪神」(30日、ナゴヤドーム)
負の流れを断ち切りたかった。初回に7点を先制され、迎えた二回の先頭。阪神・原口文仁捕手が、先発・バルデスの高めに浮いた直球をフルスイング。高々と舞い上がった打球は、そのまま左翼席に着弾した。
「真っすぐが(スピード)ガン以上より速いことはわかっていたので、そのボールを狙いにいきました」
7月27日・ヤクルト戦(甲子園)以来の今季10号ソロ。阪神捕手の2桁本塁打は、2010年の城島健司(28本)以来、生え抜き捕手となれば1985年の木戸克彦(13本)以来の快挙だ。4月27日に支配下再登録を勝ち取り、ここまで90試合に出場。10本の放物線もさることながら、打率・303と高い率も残している。
「『やばいなぁ』と。それだけでしたね」
昨年の8月。ウエスタンも残り数試合となり、背番号124は戦力外通告の恐怖と戦っていた。2軍戦での打率は、2割台前半と全くふるわない。当時3年目の北條は100試合以上に出場して経験を積む一方、自身は50試合にも届かない。高卒6年目の夏が終わり、最悪のシナリオが脳裏に浮かんでいた。
「そんなときに、鶴岡さんは『まだ他に11球団あるだろ』と言ってくださって、日高さん(現プロスカウト)は『頑張っていれば、必ず誰か見てくれているから』と励ましてくださいました」
諦めかけていた心に火を付けてくれたのは、尊敬する先輩捕手からの言葉だった。「どんだけ考えても僕には野球しかないと思いました」。腰、右肩と度重なるケガに苦しんできた野球人生も、必ず光が差し込むと信じてやってきた。共に白球を追ってきた仲間がプロの世界から次々といなくなっても、志が折れることはなかった。
「アピールするという意味では、もっと守備をやらないと。頑張っていきます!」
師匠と慕う城島氏以来の2桁本塁打は、原口にとってこれ以上にない価値ある数字だ。今は、CS進出に向けて一戦一戦。「城島2世」の可能性を秘める青年が、猛虎打線の軸として輝きを放つ。