岩貞完封、前夜3発のヤクルト山田えぐった! 虎の連敗4でストップ

 「ヤクルト0-5阪神」(11日、神宮球場)

 最後まで攻め抜いた。岩貞祐太投手(25)がヤクルト打線を散発4安打に抑えて、今季2度目の完封勝利。前夜に3本塁打を放った山田哲人も内角をえぐり、無安打に抑え込んだ。負ければ中日と同率で並んで最下位タイとなる危機を救い、チームの連敗を4でストップ。残り11試合。金本阪神は最後まで全力で戦い抜く。

 秋風吹く神宮球場。カクテル光線に照らされた主役は、今季2度目の完封勝利を飾った岩貞だった。5月27日・巨人戦(東京ドーム)以来、130球の熱投はチームを奮い立たせた。「いいぞ岩貞~!」。笑顔の虎ファンが大歓声を送る。久しぶりの勝利の美酒だ。

 「チームも連敗していましたし、打たれる時は『全部力を使い果たして』というふうに思っていたので、1球1球全力でいきました」

 最速147キロの直球を投げきり、燕打戦を力でねじ伏せた。二回、先頭山田への内角球が引っかかり、背中を直撃する死球。続く鵜久森に左中間二塁打を許し、瞬く間に暗雲がたちこめた。それでも雄平、西浦を連続三振に斬って後続もピシャリ。そして、直後の三回に真価を発揮した。

 2死二塁のピンチで、打席には再び山田。前日の試合で3本塁打を放っている球界屈指の強打者へ、初球は懐をえぐる真っすぐだ。死球を与えた次の打席でも、果敢に攻めた。3、4打席目もシャットアウト。「昨日(10日)あれだけ打ってちょっとビビッたというか…」と恐怖心もあったが、負けなかった。

 9回4安打無失点、8奪三振。今季7勝目の勝因は、自身の力だけではない。前回コンビを組んだ4日・DeNA戦(甲子園)も、8回3安打無失点の快投で白星。18・44メートル先には、同級生の原口だ。今季は共にブレークし、初のオールスターも経験。互いに尊敬し合う両者だからこそ、息はぴったりだった。

 「原口の打席に入った時の集中力がすごいと思います」

 球宴出場時のアンケート。岩貞は「プロが認めるプロのプレー、ここが一流」という欄に、相棒の名を記した。球団関係者は「皆、他球団の選手を書くことが多いんですけど。(自チームの選手を書いたのは)岩貞だけだと思います」と話す。8月末の名古屋遠征では2人で食事に出掛け、入念に投球プランを練っていた。強固な信頼関係が快投を呼ぶ。

 「やっぱり毎回そうですけど、捕手のリードがあってこその結果だと思いますし、今日はたくさん点を取っていただいて、楽に投げることができました」

 六回1死満塁では自ら左前へプロ初適時打も放ち、最後の最後まで投げきった。金本監督は「力的にはもう少し勝てるし、10勝いってもおかしくない投手」とさらなる奮起に期待する。最下位へと沈む可能性もあった夜に、希望の星が光輝いた。来季、岩貞は投手陣の柱になり得る。試合後、神宮球場に吹いた秋風は、そう訴えているようだった。

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