阪神 原口がルールブックの盲点を突く走塁で見せた集中力

 「阪神春季キャンプ」(23日、宜野座)

 阪神の原口文仁捕手が午後から行われたケース打撃で“ルールブックの盲点”を突く走塁を見せた。結果はアウトだったが、好判断と野球に対する知識の深さをアピールした。

 場面は1死一、三塁。打者は植田、一塁走者はキャンベル、そして三塁走者に原口がいた。ヒットエンドランのサインで投手がモーションを起こすと同時に、キャンベルがスタート。植田が放った打球は痛烈なライナーとなって遊撃・北條のグラブに収まった。

 その瞬間、一塁走者のキャンベルは戻るそぶりを見せずに二塁へ。これを見た原口は一気に本塁へ全力疾走を始めた。北條の一塁転送がホームベースを踏むよりも早かったため、球審は「ノーラン、ノーラン」とジェスチャー付きでコール。得点は認められなかったが、仮に一塁転送よりもホームへの生還が早く、守備陣がボールを三塁に転送してアピールすることがなければ、1点が入るケースだった。

 原口は「ルールは知っていました。何年か前の高校野球であったことを覚えていたので」と明かす。2012年夏の甲子園で、済々黌-鳴門戦の七回に同様のプレーが起こった。一塁の封殺よりも本塁生還が早く、そのまま鳴門の野手はベンチへ戻っていった。

 ここで公認野球規則の4・09「得点の記録」と7・10「アピールアウト」が適用され、鳴門は一塁走者をアウトにした後でも、三塁走者のアウトをアピールすれば3つ目のアウトを置き換えることができた。だがアピールは選手が競技場を離れるまでに行わねばならないため、鳴門の選手がファウルラインを越えた瞬間、済々黌の得点が認められた。

 漫画「ドカベン」でも、明訓・山田太郎が2年夏、神奈川大会3回戦で好投手・不知火を擁する白新と対戦。0-0の延長十回表、明訓は1死満塁で5番・微笑がスクイズを試みたが、投前の小飛球となり、これを不知火が好捕。飛び出した一走・山田も刺された。だが、一走がアウトになる前に三走・岩鬼がそのままホームイン。白新ナインは一走が刺され、第3アウトが宣告された時点で全員ベンチに引き揚げたため、明訓に1点が認められ、これが決勝点となった描写がある。

 以降、“ルールブックの盲点”として語り継がれるワンプレーを、原口は知識として頭に入れ、瞬時に実戦。「きょうはホームへの生還が遅かったんですか?」と記者に逆質問し、悔しそうな表情を浮かべた。わずかなチャンスも見逃さない-。昨季、育成からシンデレラストーリーを描いた男の集中力が、練習の一瞬からかいま見えた。

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