球児独白!猛虎復活へ伝えたい 伊良部&05年V戦士から学んだ「勝つチームの空気」

 デイリースポーツの紙面コラム「松とら屋本舗」でおなじみの松下雄一郎記者が、阪神・藤川球児投手(36)を直撃インタビュー。05年以来となる優勝への熱い思いなど、球児の本音に迫った。当時のV戦士の大半がユニホームを脱いだ猛虎。当時の「勝てるチームの空気」を振り返りながら、自身に課された役割などに言及。「強い猛虎の復活」への意欲をにじませた。

  ◇  ◇

 -球児のここまでのキャンプを見てきて、スロー調整というよりは、土台固めを終えた後もあえてじっくり調整を進めているように感じる。

 「ペースを上げたのは23日からですね。ある程度投げられるようになって(紅白戦の)映像も見て…シャープさを求めていくのはここからの1カ月になります」

 -順調にきている?

 「450球(ブルペン練習)をメドにこのキャンプに臨んだ。第5クールまでで400球。あと50球をこのキャンプまでにというイメージ。球数的には大丈夫。フリー打撃登板の翌日にブルペンで70球投げても大丈夫だったし、連投への対応も一つずつクリアできてる。ここからはシャープさ。23日から上げ始めたんだけど、うまく上がっていきそうな感じがする。ここからは多少無理もして、体に少しずつ負荷を掛けながら…」

 -調整ペースがブレークした05年と似ている。あの年の調整は極力無理をしなかった。

 「今まで無理をしたつもりはないけど、結果的にはそうなるかもしれない。(先発調整をした)去年は無理をしたというより、キャンプに向けた調整もあった。それは新しい取り組みとしてはよかったけど、どうしても好不調の波が出てしまって難しさがあった」

 -そういえば05年の優勝を知る選手も少なくなった。当時、ともに現役だった選手たちが監督、コーチになっている。

 「寂しいという表現が適切か分からないけど…正直たまに感じる時がありますね。昔は一緒に戦って、いつでも何でも話をして、いつでも食事に行けて…そういう人たちとあえて一定の距離感を保ちながらやらないといけない。やっぱり『選手と首脳陣』というケジメが必要だから。それに、その中で求められていることがあると思う。若い選手に伝えるというか…若手とコミュニケーションを取ることも、それはそれで楽しいけどね」

 -優勝から遠ざかった分、05年の「勝つチームの空気」を知る選手が少なくなった。

 「当時を知る選手は少なくなったけど、(中日で優勝を経験している)福留さんにはやっぱりそういう空気を感じる。一緒にいても『勝つチームの選手の空気』を強く感じる。聡文(高橋)もそう。(首脳陣に)ついて行くというより『自分がやらないといけない』という自覚が強いですよね。責任感というか、誰に何を言われることもなく自分で何かを感じて、自分でやって、それを結果につなげて…」

 -球児はそういうことを誰から学んだ?

 「05年当時主力だった先輩からですね。あと03年の伊良部さんもそう。そばで見ていても何のためのトレーニングなのか分からない。でもその一つ一つに、実は大切な意味があった。練習方法は違うけど向かう方向は一緒。その上で結果を出して…それをすべて自分で感じながらやってる。『俺もいつかあんな選手になりたい』と思った」

 -今は球児がそれを伝える立場にある。

 「プロの世界だから空気だけで勝てるとは思わない。でも、そういう選手がチームにどれだけいるのかというのが、最終的にはグラウンド上での結果に表れると思う。簡単ではないかもしれないけど、そういう空気を少しでも伝えていけるようにね。監督もそれを望んでいると思う」

 -メンデスとは米レンジャーズ、ドリスとはカブスでチームメート。キャンプ中も談笑しているところをよく見掛ける。コミュニケーションは何語で?

 「英語とちょっとしたドミニカ語。英語が多いですね。英語ができるわけではないけど…メッセンジャーと英語で話し合うことはできなくても、英語を覚えようとした者同士なら不思議とコミュニケーションが取れる」

 -メンデスはどういう男?

 「若いけど実績もあって『俺はできる』という強い思いがある。それと…シャイです。もっと自分を出せばいい。いろいろ引き出して行こうと思ってる」

 -ドリスは陽気なタイプ?

 「元々そういうタイプじゃないと思う。だから『自由にやればいいよ。引く必要はないよ』と言ってる。米国ではそれが難しい。どうしても国ごとに分かれてしまうので…」

 -今季は開幕からブルペンの精神的支柱。

 「リーダーシップというわけではないけど…もともとコミュニケーションを取るのが好きな性格だからね。自分が若い時(メジャーに行く前)は自分より若い選手が出てくることが多かった。でも、自分がタイガースを離れている間に若手が台頭することはなくて、今度は逆に僕より上の人(福原、安藤ら)が中心的役割を果たすようになっていた。自分が戻って来たことで、若い選手が一層働きやすい環境にできたら…それは監督が望むところでもあると思う」

 -思えば05年の中継ぎ陣は若かった。

 「05年もブルペンは自分が年長の部類で、最年長に助っ人のジェフがいた。30歳を過ぎた辺りだったかな。そのメンバーのブルペンがしばらく続いて…若い選手が出てこない時代が続いた。でも、パフォーマンスがよくて能力のある選手はたくさんいるからね」

 -05年の投手最年長は下柳さんの37歳だったが、今の球児がちょうどその年代。当時の球児はベテランと若手のパイプ役を務めていた。

 「それは今でも同じかな。首脳陣と若手の間という意味で」

 -下柳さんは常に若手の面倒を見るというよりは…。

 「いざという時にというタイプやったね」

 -今の球児はシモさんと(兄貴分的な)ジェフの中間的な役割?

 「誰と比べるというものではないけど、自分がここ(宜野座の1軍キャンプ)に呼ばれている理由はそういうところもあると思う」

 -若手から聞かれること、アドバイスを求められることは?

 「あるね。最近多くなった。若い子とのコミュニケーションは常に取ってる。体調面の不安とか…そういう時は早めに対応するようにしてる。自分が経験してるからね。コーチやトレーナーへの橋渡し的な存在がいないまま、無理して故障につながって…そういうのはよくないから」

 -最近はキャンプ途中の離脱者が減った。

 「そうですね。若い頃の僕はいつも3日目ぐらい(笑)。調整段階での故障を防ぐというのは、監督の意向でもある。それを経験者の立場からアドバイスするというか…例えば去年のサダ(岩貞)がそうだった。早い段階で相談に来てくれた。『ちょっと疲れが出てきました』と…」

 -その時はどういうアドバイスを?

 「すぐに『今はやめといた方がいい』と言った。2月半ばぐらいだったから『今休んでも開幕には間に合うよ』と。こういうことは故障してからでは遅い」

 -年齢とともに結果を求められることの重圧は大きくなる?

 「これはすべての選手に言えることかもしれないけど、とくにリリーフは結果が必要とされる。この時期の状態でどうこうというのはないですね。大きくなるのは自分への重圧。他人と比べず、周りの評価に惑わず。選手としては対バッターで打たれるのが嫌なのは変わらない。その結果が欲しいし、それが充実感につながる。若い頃は『活躍したい』といった思いが強かったけど…年齢とともに方向性の集約の仕方が変わったと思う」

 -昨季は中継ぎ転向後に、中継ぎの体を作りながら投げていた。

 「合わせるのが難しかったのはあったね。(7月頃に)状態が良くなりだしたのは気付いたけど、その中でチーム状況も動く。今から思えばそれに対応できるだけの俊敏さ、リリーフ用のシャープさ、力強さ、球持ち…そういう細かい作業が足りてなかったと思う」

 -オフは下半身強化に力を入れたと聞く。

 「それはやりましたね。ただ、年齢的なこともあって若い頃よりは仕上がりに時間が掛かる部分もあるかな」

 -最終クールから調整が本格化していく。

 「開幕に向けて仕上がればね。多少遅れたとしても、若い選手も外国人選手もいる。頼るつもりはまったくないけど、そこは『ポジションを勝ち取る』という自分本位な思いを持たず、チームに一番貢献できるような形を目指したい。チームが一番苦しい時期、必要とされる時期にためになれるように…」

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