一塁転向…捕手にこだわる阪神・原口の背中を押した「師匠」の一言
「広島6-10阪神」(31日、マツダスタジアム)
阪神の原口文仁捕手が開幕戦に「5番・一塁」で先発出場。初回に貴重な追加点となる左中間適時二塁打を含む3安打1打点の活躍で、チームの開幕戦勝利に大きく貢献した。
「孝介さんが走者を1人帰してくれたので、気持ちも楽になった」と初回、福留の併殺打間に1点を先制し、なおも2死三塁からジョンソンが投じた初球の146キロストレートをきれいに振り抜いた。
打球は痛烈なライナーとなって遊撃手の頭上を越え、左中間を真っ二つに破る適時二塁打。これで勢いをつけると六回の第4打席では左前打、続く七回の第5打席も左前へ安打を放った。自身初の開幕戦で3安打猛打賞。「オープン戦でああいうヒットがなかったので、結果を出せて良かった」と安どの表情を浮かべる。
宜野座キャンプ最終日、原口は首脳陣から一塁転向を告げられた。誰よりも捕手を愛し、捕手にこだわりを持つ男にとって、つらい現実だった。古傷の右肩はキャンプ時で調子を維持していたが、シーズンを戦い抜く中で、状態が悪化すれば出場機会すら失われる。首脳陣にとっても苦渋の決断で、打力を生かすための選択だった。
そんな中、原口は「僕の師匠」と語る城島健司氏の電話を鳴らした。城島氏が左膝の故障などでリハビリ中、鳴尾浜で捕手のイロハを教わっていた。報告を兼ね、思いの丈を伝えると「『とにかく一塁で頑張れ』って言われました」と明かした原口。師匠はその思いをくみ、何も言わずに背中を押してくれた。
オープン戦では結果が出ず、打撃フォームにも悩まされた。それでも開幕前3日間の練習で手応えをつかみ、この日の試合前には「もう吹っ切れました」とすがすがしい表情を浮かべていた。慣れない一塁守備で失策もあり「1つのミスで変わってしまう。もっとしっかり集中して守らないといけない」と課題も口にしたシンデレラボーイ。新たな場所で生きていく-。その覚悟がにじみ出た開幕戦で、価値ある勝利に貢献して見せた。